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Channel: 電脳工廠・兵器(武器,弾薬)庫
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[転載]目を凝らせばプーチンのほくそえみが見える(1)

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最近のプーチン発言について、皆さんはどうように受け取られたでしょうか。
北方領土問題の改善に兆しを感じましたか?
私は全くそうではありません。むしろ危機感を感じました。
ロシアという国のしたたかな外交について、記事を書こうとしました。
そしてまず最近のプーチン発言に関することを冒頭部分とするために、まずこの発言はどのように報道されたかについて調べました。
釈然としません。どれも判を押したように領土問題解決の機会と捉えています。
何だかおかしい。私が神経質過ぎるのだろうか・・
 
しかし、日経にとても重要な論調を見つけました。
3月8日(木)にこの日経に載った鋭い論説について、私は早急に皆さんにお伝えしなければなりません。
 
論説のタイトル:ロシア高官が驚いた日本のナイーブさ
サブタイトル:北方領土に関するプーチン発言の真意と日本の誤解
論説の著者:袴田 茂樹(はかまだしげき)氏
 青山学院大学国際政治経済学部教授
 ロシア東欧学会 前代表理事
 安全保障問題研究会 会長
 
 以下は論説の原文です。文字数制限のために私のコメントは控えます。
それでも入りきらないので分割します。
 
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ロシアで3月1日に、プーチン首相と国外のマスコミ人との記者会見が行われた。同首相は日露関係、特に北方領土問題に関して、そうとう踏み込んだ微妙な発言をした。日本のマスコミはこれを大きく取り上げた。
 続いて3月4日にはロシアで大統領選挙が行われた。予想どおりプーチン首相が任期6年の大統領に復帰する。日本は今後、プーチン大統領を相手として北方領土をはじめとする対露政策を遂行することになる。
 本稿ではまず、北方領土についてのプーチン発言について、分析を行う。我が国では、大きく誤解されて報道されている。

北方領土に関するプーチン発言は、きわめて厳しいもの

 日本のマスコミには、「北方領土決着にプーチン氏意欲」「プーチン氏が口火、『決着強く望まれる』」「日本政府『意欲』に期待感」「ロシア側も譲る用意があることを示唆」という見出しが踊った。
 若宮啓文主筆が会見に参加した朝日新聞は、「柔道という『和の心』を示しつつの発言は、『サプライズ』を伴う強烈なメッセージだ。領土での妥協をも示唆するようなリスクをとっての発言は、領土問題解決への強い意欲の表れともいえる」と報じた。NHKも「大統領への復帰後に日本との領土問題を解決することに意欲を示した」と伝えた。
 藤村官房長官も記者会見で、「プーチン首相の発言は、日露関係における領土問題の重要性を指摘し、その解決に意欲を示したものとして期待をしている」と述べた。
 プーチン首相は、各国マスコミ代表との記者会見で、実際にどのような発言をしたのか。首相の公式サイトがこれを掲載している。早速ロシア語の原文を読んで、私は驚いた。北方領土に関するプーチン発言は、日本のマスコミのトーンと大きく異なるのだ。いや、日本にとってきわめて厳しい発言をしている。そのことを、朝日新聞も他の日本のマスコミも、まったく伝えていない。

「我々の交渉はすべてが振り出しに戻った」~2島返還さえリセット

 その典型が、平和条約締結後に歯舞、色丹の2島を日本に引き渡すと合意した1956年の日ソ共同宣言に関する発言である。少し長いがプーチン発言を引用する。
 「私たちは、柔道家として、勇気ある一歩を踏み出さなくてはなりません。しかしそれは、勝つためであって、負けるためではありません。この状況では、奇妙に思えるかもしれませんが、私たちは勝利を得ようとしてはなりません。この状況では、私たちは受け入れ可能な妥協が必要です。何か『ヒキワケ』に類するものです」
 「……ソ連は、日本との長い交渉の末に、1956年に共同宣言に調印しました。この宣言には、2島を平和条約締結後に引き渡す――ここに注目してほしいのですが――と書かれています。つまり平和条約が意味することは、日本とソ連との間には、領土に関する他の諸要求は存在しないということです。そこ(56年宣言)には、2島がいかなる諸条件の下に引き渡されるのか、またその島がその後どちらの国の主権下に置かれるかについては、書かれていません。……これ(56年宣言)は日本の国会とソ連の最高会議で批准されました。つまり、基本的にこの宣言は、法的効力を有するようになったのです」
 
「……森(本誌注:喜朗)総理は私に、今のロシアは1956年宣言に復帰するつもりはあるか、と尋ねました。私は次のように言いました。『ダー、……復帰する用意がある』と。しばらくして日本側は、『56年宣言への復帰は結構だが、ただ宣言には2島のみで平和条約と書かれている、しかし我々は4島が返還された後、平和条約を結びたい』と述べました。これはもはや56年宣言ではありません。こうして我々の間ではすべてが再び振り出しに戻ったのです」
 「……私が大統領になったら、私たちは両国の外務省を招集して、『ハジメ!』の指令を出しましょう」

「引き渡し」は「返還」ではない

 ここでプーチン首相が述べたことは明確である。
◆歯舞、色丹2島の引き渡しに合意した日ソ共同宣言のみが法的拘束力のある取り決めである。日本とロシアの間にはそれ以外の領土問題は、存在しない。(国後、択捉の帰属問題も交渉の対象とした東京宣言は、法的拘束力のある合意とみなさない)
 実は日本のマスコミが報じていないもっと強硬な発言をプーチンはしている。それは、太字の部分の発言から帰結する次の2点である。
◆平和条約締結後に歯舞、色丹を引き渡すとしても、無条件ではない。
◆平和条約締結後に歯舞、色丹を日本に「引き渡す」ということは、必ずしも主権を日本に渡すことを意味しない。
 ロシアはこれまで、日ソ共同宣言で述べられているのは「引き渡し」であって、「返還」ではないと述べてきた。ロシア側の「論理」が何を意味するか、ここで明確になっている。主権をロシアが保持したままの「引き渡し」とは何か。それは、例えば日本に経済開発権や住民の居住権を与えても、ロシア領であることは変わりない、という意味になる。そうなると、2島周辺の排他的経済水域もロシアの水域ということになる。しかもその「引き渡し」さえ無条件ではないとなると、賃貸(租借)その他の条件をつけることを示唆していることになる。

…国後・択捉の返還交渉は論外

 最近日本のマスコミはプーチンと2島問題について、次のように報じている。「プーチン氏は2000年から08年に大統領を務め、その間、日本との経済関係の強化に積極的な姿勢を示したが、領土問題では歯舞、色丹2島返還での決着を主張し、日本が求める4島返還に反対姿勢を示した」(読売新聞夕刊 3月5日)。「そもそもプーチン氏はこれまで歯舞、色丹の2島を返還するとした1956年の日ソ共同宣言から譲歩するような発言は一度もしていない」(産経新聞3月6日)。「『北方領土 最終解決を』 2島で『引き分け』」(毎日新聞 3月3日 見出し)。
 これらはすべて「2島引き渡し」が事実上2島返還を意味すると解釈している。しかし、ロシアでは数年前から様々な最強硬論が浮上していた。「日露平和条約は不要」「日ソ共同宣言は履行する必要がない」。さらには「日ソ共同宣言を履行したとしても、平和条約締結後、日本に歯舞、色丹を返還する必要はない」というものがある。今回のプーチンの発言はこの後者の強硬論に沿ったものである。読売新聞や産経新聞が報じる「プーチンの硬い姿勢」が、むしろたいへん甘い見方だということがお分りだろう。
 
 「09年には、国後、択捉、歯舞の3島と択捉島の一部を返還する『3.5島返還論』が出たように、今後の交渉過程では様々な案が浮上しそうだ」(日経 3月6日)。「プーチン氏は交渉の出発点に歯舞群島、色丹島の2島引き渡しを位置づけている。今後の交渉によって、ロシアからさらなる妥協を引き出すことは可能だ」(産経新聞3月6日)。これらの解説も、ロシアが2島返還を認めており、したがってプーチンが「ハジメ」の指令を出した日露間の新たな交渉とは、残りの国後、択捉に関するもの、と考えている。
 しかし、プーチンは国後、択捉は問題にならないと断言しているのだ。となると、彼の考える領土交渉の「ハジメ」とは何を意味するのか。「2島では不十分だ」との若宮氏の発言に対してプーチンがこの言葉を述べたとしても、彼の今回の発言の論理的な道筋から言うと、「日ソ共同宣言で明確にされていないこと」――つまり歯舞、色丹の引き渡しの条件とか、その2島の主権の問題――を考えていることは当然だろう。
 それを超えて、国後、択捉の返還交渉をプーチン首相が本気で考えていると見るのは、あまりにもナイーブで素人的だ。これらの甘さは、私が指摘した56年宣言に関するプーチン首相の強硬発言に注意を向けていないために起こる。このこと自体が異様である。(注、東京新聞の3月6日の社説だけが、私1の指摘を受けて少し触れた)。3月5日に私が個人的に話したロシア外務省の高官も、プーチンのこの重大発言に日本側の誰も注意を向けていないことに驚いていた。

 

転載元: くにしおもほゆ


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