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中国新体制を占う

 

1/10日付
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中国新体制を占う

 「今さらね、領土問題があるなんて言えませんよ。ただね、外交上の係争はあるんだ。欧米の大使なんかみんな言ってますよ」
 年末の日本記者クラブ。前駐中国大使の丹羽宇一郎氏は、尖閣に対する世界と日本の"常識"の違いに言及した。大任を終えた解放感からかボルテージは一気に上昇した。
 習近平総書記の下で2期10年の政権が動き出した中国。領土問題では胡錦濤政権よりもより強硬な舵取りが予想されている。同じく新政権が誕生した日本は、この隣国にどう向き合っていけばいいのか。
 國分良成・防衛大学校長は「中国が態度を大きく軟化させる可能性は低い」と楽観論を封じ、危機への備えを説く。松田康博・東大大学院教授は「安倍政権はナショナリズムを封印するべきだ」とする。山内敏秀・横浜商科大学講師は「習近平氏が人民解放軍を統制するには限界がある」とし、米国との協調を訴える。
 日本の常識は世界に通用するのか。3氏に今後10年を見据えた中国新体制のありようを聞いた。

密接に絡む党内権力闘争と対日姿勢

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國分 良成(こくぶん りょうせい)氏 防衛大学校長
 昨年11月、中国共産党第18回全国代表大会(18全大会)が開催され、胡錦濤氏に代わって習近平氏が中国共産党中央総書記に就任した。18全大会は激しい権力闘争だけが際立ち、新たな政策ビジョンが提示されなかった。党中央軍事委員会主席に関しては、前任の江沢民氏が総書記退任後も2年間その地位を保持したことから、胡氏も2年間居座るだろうとの予想が一般的であった。しかし、胡氏は過去に例のないほどに潔く退いた。
 ただ今回の党大会でも、重要な人事の決定は完全密室の中で行われ、民意は無視されたままであった。中国の経済・社会、そして人々の意識は市場経済化とともに大きく変わったにもかかわらず、一党独裁という厳しい政治体制の現実は変わっていない。共産党指導の市場経済は、重要な許認可権限を党が保持している以上、政治腐敗の温床である。
 胡錦濤時代の10年間、彼は前任の江沢民時代の成長一辺倒の中で生まれた各種の格差や矛盾を是正するために「和諧(調和)社会建設」を訴えた。が、現実にはそれらは縮小するどころか拡大した。その結果、土地強制収用、汚職、公害等をめぐる社会の側からの抗議行動が多発している。
 なぜこのような結果となったのか。それを解く一つのカギは、胡錦濤時代10年間の権力状況との相関性である。それはすなわち政治局常務委員会9人のメンバー構成であり、振り返ると、胡氏は最初から最後まで少数派であり、多くは旧江沢民・曾慶紅系列の人々で構成されており、自身の政策運営を自由に展開できる状況ではなかった。
 今回、政治局常務委員会のメンバーは7人となった。昨年2月の重慶(薄熙来)事件以後、胡氏の権力基盤である共産主義青年団(共青団)系統の人材の登用が多く見込まれたが、8月前半の長老も含めた北戴河での党中央の拡大会議において、江・曾守旧派による激しい巻き返しがあり、11月の党大会では胡派が敗北した。
中国の最優先課題は所得再配分である。胡政権はしばしばそれを説いたが、国有企業と癒着し既得権益を享受する守旧派は、資産公開や税制の適用を拒んだ。新たな習近平政権はこうした勢力や組織を権力の基盤としており、既得権益層に切り込むような大胆な政治改革を断行することは難しそうだ。
 胡氏が権力を掌握していた春から夏、日本の尖閣国有化の動きに対して中国の反発は少なかった。だが、8月中旬以降その態度が急激に硬化した。胡時代の対日融和策に対する批判が北戴河で噴出したと思われる。つまり、対日姿勢の硬化と党内権力闘争は密接に関連していた。とすると、今後中国側が態度を大きく軟化させる可能性は低い。
 現場では、偶発的に接触・衝突しかねない厳しい状況が続いており、危機への備えも緊要である。しかし、ハイレベル対話により現在の緊張を少しでも緩和させることが望ましく、その意味で日中戦略的互恵関係をスタートさせた安倍新政権の手腕に期待したい。

現実主義に徹し周辺国と関係強化を

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松田 康博(まつだ やすひろ)氏 東大大学院教授
 2012年は、あたかも惑星直列のように、多くの国で選挙や指導者交代があった。その特徴を一言で言えば、内政が外交に悪影響を及ぼす1年だったということである。内向きになった政治家が、外国への配慮をかなぐり捨てたことで、トラブルが連鎖してしまった。竹島問題や尖閣諸島問題が非常にこじれたのは、その典型である。
 13年は、日中両国を含め、各国の新しい指導部が外交を展開することになる。果たして、習近平指導部は、どのような特徴を持っていて、壊れてしまった日本との関係にどう対処するのだろうか。また安倍政権はどのように対応すべきなのであろうか。
 現在中国では、一党独裁体制の下で輸出主導型の高度経済成長を続ける矛盾が噴出している。中国は、各種改革を不断に進めなければ社会不安を招く局面にある。
 しかし、習近平政権は、太子党(高級幹部の子弟)、胡錦濤派(共産主義青年団を中心とする派閥)、上海閥(江沢民を中心とする派閥)の妥協によって成立した政権である。中央政治局は胡錦濤派、同常務委員会は上海閥が多数を占め、習近平のリーダーシップは制約されている。
 私が習近平なら、無理に自分の路線を打ち出すことなく、共産党の政権維持を図るため胡錦濤指導部のやろうとしてできなかった政策をやるだろう。それは、(1)親民政治(2)腐敗対策(3)格差是正――である。ただし、(2)と(3)は既得権益層と利益が相反して困難なため、(1)が先行することになるだろう。
 また、リーダーシップが弱いと、対外政策における柔軟性を発揮しにくい。恐らく、習近平政権は、尖閣諸島問題や南シナ海の領土紛争、アメリカの「アジア回帰」などに対して、強い姿勢で臨むことになるであろう。国防予算も増大させ、海洋権益を獲得するための海上法執行機関も予算を増大させ、ナショナリスティックな国民に迎合する態度を取らざるを得ないであろう。
 ただし、そのことは、日中関係改善の望みが全く無いと言うことを意味しない。今年3月に開催予定の全国人民代表大会で、国務院など主要な政府人事が確定する。それ以降は、ポストが未決のため様子見で強硬一辺倒だった人達が、「問題の解決」を迫られるようになる。日本と喧嘩すれば中国の未来はない。日中関係改善のチャンスは必ず訪れる。
 安倍政権は、ナショナリズムを封印して現実主義に立ち戻り、米国のみならず、まず韓国との関係改善を図り、あらゆる中国の周辺国と関係強化を進めるべきである。中国に「日本と喧嘩しては損で、仲良くすれば得である」と感じさせた上で、中国の歩み寄りを待ち、日中関係を原状復帰させるのである。
 国民も、ナショナリズムに殉じるのではなく、リアリズムに徹して国益を獲得する政権に拍手すべきである。日本全体が今、試されている。

人民解放軍の政治的統制には限界

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山内 敏秀(やまうち としひで)氏 横浜商科大学講師
 習近平体制の今後を見る視点の一つは人民解放軍との関係である。人民解放軍の基本的性格は革命軍であり、その性格は今日に受け継がれている。党軍関係という言葉がそれを象徴している。
小平は近代的な国防軍への転換を図ったが、天安門事件によって頓挫し、人民解放軍は国防法制定に当たって党の領導を受け入れることにより、従来からの位置に留まることを選択した。その狙いは、既得権益の維持、拡大である。軍隊経験のない江沢民以降の指導者が人民解放軍のこの意向を汲むことで軍権の掌握を図ったことが人民解放軍の肥大化を招いた。
 さらに、伝統的な地理的国境から300万平方キロメートル離れた海洋管轄区の遠端に戦略国境を拡大しなければならないとする戦略国境論がこの肥大化に拍車をかけた。
 改革・解放政策、いわゆる85戦略転換および戦略国境論を背景に、中国海軍が改定した近海防御戦略は、第1島嶼線の内側においてシーコントロールを獲得し、第1島嶼線と第2島嶼線の間ではシーディナイアルを企図したものであった。そして、近海防御戦略に基づき、中国海軍の近代化は推進されてきた。
 昨年9月に就役した空母「遼寧」をはじめ、主要戦闘艦艇の近代化は「質量密集」をスローガンに促進され、また、ソマリア沖海賊対処等を通じ作戦能力も向上させつつある。
 「遼寧」の就役に続いて、中国は国産空母を建造し、「軍事外交、プレゼンス、危機の抑止等に強力な影響力を発揮する」空母戦闘群の編成、さらには艦隊の再編を行うと思われる。
 さらに、空母戦闘群をもって時宜にかなった人道支援・災害援助を実施し、大国としての地位を示し、地域覇権の確立を目指すものと考えられる。
 英国際政治学者K・ブースは海軍を軍事的機能、外交的機能および警察的機能の三位一体を成すものと捉えた。中国海軍には「旅洋(ルヤン)Ⅱ」級ミサイル駆逐艦などの問題改善といった克服しなければならない課題は少なくないが、三位一体の底辺をなす軍事的機能を向上させた中国は、その外交的機能を最大限に活用しようとするであろう。
 しかし、海軍の外交的機能を活用し、政治目標を達成しようとするとき、シビリアン・コントロールが不可欠であるが、党軍関係の残る環境下で習近平総書記が人民解放軍を政治的に統制することには限界があるように思われる。この場合、現在の尖閣をめぐる日中関係のように国際政治におけるチキン・ゲームを招きかねず、国際社会の不安定要因となる。
 中国への対応は、地道な信頼醸成措置の効果を積み上げ、冒険的あるいは攻撃的な行動へのインセンティブを低下させることが極めて重要である。
 その上で、海洋利用についてもゼロサム・ゲーム的な見方にたつ中国にウィン・ウィンの関係が可能であることを、関係国、特に米国と協調した粘り強い関与が必要である。
 尖閣の問題については小平によって領土問題の存在を想起させられたことを考えれば、国際司法裁判所への提訴も視野に入れた、より積極的な国際社会への働きかけが必要である。
◇國分 良成(こくぶん りょうせい)氏
1953年生まれ。慶大教授、同法学部長を経て現職。専門は現代中国論および東アジア国際関係。主な著書に『中国は、いま』(編著)。
◇松田 康博(まつだ やすひろ)氏
1965年生まれ。防衛研究所主任研究官などを経て現職。東大東洋文化研究所教授兼務。専門は東アジアの国際政治・外交。主要著作に『岐路に立つ日中関係』。
◇山内 敏秀(やまうち としひで)氏
1948年生まれ。潜水艦「せとしお」艦長、防大教授を経て現職。専門はアジアの軍事・安全保障。主な著書に『中国の軍事力』(共著)。
 

1/10日付
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露軍機が南下中国機は接近

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 ロシア空軍のイリューシンIL20型電子偵察機1機が12月27日、ハバロフスク州方面から日本の領空に接近、北海道沖の日本海側を南下して奥尻島、秋田、佐渡、能登半島、舞鶴沖に沿って飛行したため、空自の北空、中空、西空のF15戦闘機などが緊急発進して対応した。露軍機は山陰沖から北西に針路を変えて日本から離れ、自国領方面に戻った。
 一方、沖縄県尖閣諸島沖の東シナ海では1月5日、中国国家海洋局所属の小型プロペラ機「Y12」=写真=が魚釣島の北約120キロまで接近したため、空自のF15戦闘機などが対応した。機番はB3806で、昨年末に相次いで同海域に飛来した機体と同じとみられ、飛行コースもほぼ同じだった。両機とも領空侵犯には至らなかったが、統幕はそれぞれ空自機が撮影した航空機の写真と航跡図を公開した。
 
 

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