天皇と国家と教育 昭和50年
四)民族的・民主的健全な精神とは何か。それに答えぬ宮本発言
生きるとは、単に衣食住の点で満足すれば事足りる、というものではない。
生きるとは、天涯孤独で生活することではない。人々との生活が前提となる。
無限の欲望をみずから制し、慎しみの生活が要求される。共産党の発言には
眉(まゆ)に睡(つば)をつけて裏を読みとる必要がある。政党の目標は天下を
とることにある、ただしとればよい、というものではない、民族の健全な精神を
育てるように配慮することは当然である、との宮本発言は政治家としての見識
を示したもので、敬意を表したい。
大衆のエゴ主張をそのまま政治の基本方針に採用することが民主主義政治
であることを主張し、失敗した政治家に比べると、一段と冴えている。
ならば宮本委員長に反間したい。民族的・民主的に健全な精神とは何か!と。
共産党は天皇制についてはホンネとタテマエとがまことにはっきりしない。
天皇が日本国家存立にとって不可欠な存在であることを有史以来今日まで
国民が認め、信じてきた厳然とした事実を、どうして素直に認めようとはしな
いのか。
共産党が真に議会制民主主義政治に徹する意図があるならば、国民の80%
以上が天皇の御存在に対して納得し満足している事実を認めて、従来の
天皇制打倒のテーゼをしりぞけ、天皇制支持の声明を公表しないのか。
この点になると、国民の意志による、と逃げる。国民の意志は極めて明確で
ある。にもかかわらず口を濁しているのは、天下をとった暁には、民意と称し
て共産党員の発言(ホンの一握りの)をのみ採り上げ、
天皇制打倒を敢行するのがホンネであるからである。果して僻目(ひがめ)か。
天皇の存在しない日本国は魂のない形骸にすぎない。共産党は日本国の
天皇の存在しない日本国は魂のない形骸にすぎない。共産党は日本国の
空洞化、即潰減を意図している、と非難される所以は、余りにもホンネを
吐かないからではないか。
「昭和史の天皇・日本」より