2012-05-01
「主権」明記を巡る争い ~ GHQ憲法
かつて日本は美しかった誇りある日本、美しい日本へ
人が神となってそういう暴力が正当化される「主権」。
昭和21年(1946年)3月4日、松本蒸治国務大臣、法制局の佐藤達夫第一部長、終戦連絡中央事務局次長・白洲次郎、外務省情報部渉外課・小畑薫良、外務省嘱託の長谷川元吉が東京第一生命ビルのGHQ民政局に行き、憲法の松本案(3月2日案)を翻訳し、GHQへ説明しました。
マッカーサー案(訳)
Article I. The Emperor shall be the symbol of the State and of the Unity of the People, deriving his position from the sovereign will of the People, and from no other source.
(第一条 皇帝ハ国家ノ象徴ニシテ又人民ノ統一ノ象徴タルヘシ彼ハ其ノ地位ヲ人民ノ主権意思ヨリ承ケ之ヲ他ノ如何ナル源泉ヨリモ承ケス)
Article II. Succession to the Imperial Throne shall be dynastic and in accordance with such Imperial House Law as the Diet may enact.
3月2日松本案
松本国務相はうまく「主権」の明記を避けました。結果的にこの日のファイナルドラフトは次のようになります。
「例えば百人で構成される国家の中で、九十人が残りの異端の十人を殺してしまうという法律を作ったとしましょう。そこの国には憲法があるだろうけど、憲法も改正できるわけです。それで十人を抹殺することを容認する、これが国民主権です」
人が神となってそういう暴力が正当化されることがあるということです。
現在のGHQ憲法第一条は「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く」となっており、国民主権により皇室廃止を可能にしたものです。実はGHQ内のピンカーズ(赤いやつ)は二段階革命によって皇室廃止を目論んでいました。一段階目は天皇を利用してブルジョア民主革命を行い、二段階目で社会主義革命を起こし、皇室を廃止するというものです。
「一体、主権が国民にあるのか、天皇にあるのか、これをここで誤魔化さずにはっきりと言ってもらいたい」
野坂参三も二段階革命を志向していました。
野坂の延安演説
「人民大多数が天皇の存在を要求するならば、これに対して、われわれは譲歩しなければならぬ。それゆえに、天皇制存続の問題は、戦後、一般人民投票によって決定されるべきことを私は一個の提案として提出するものである」
当然この「主権」の問題はGHQの関心事になり、「日本の新憲法に対する基本原則」を決定し、「日本の憲法は主権が国民にあることを認めるべきである」として、GHQ憲法の首魁であるケーディス大佐を首相官邸へ派遣しました。このときケーディスは異常な熱弁をふるったといいます。二段階革命に執着していたのです。そして遂に政府は折れ、「至高」を「主権」に変えたのです。このときケーディスは「死ぬほど嬉しかった」と政府に電話で伝えてきたといいます。
参考文献
講談社文庫「白洲次郎」北康利(著)
展転社「戦後日本を狂わせたOSS日本計画」田中英道(著)
岩波現代文庫「日本国憲法の誕生」古関彰一(著)
参考サイト
国立国会図書館
3-20 日本国憲法「3月2日案」の起草と提出 http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/03/086shoshi.html
3-21 GHQとの交渉と「3月5日案」の作成 http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/03/089shoshi.html
3-22 「憲法改正草案要綱」 の発表 http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/03/093shoshi.html
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