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GHQ憲法第10条「国民の要件」の裏にあった日本人の努力

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2012-04-28

GHQ憲法第10条「国民の要件」の裏にあった日本人の努力Add Starmade-in-nippon

 
白洲次郎と佐藤達夫が奮戦しなければ今頃日本国民の財産は・・・
f:id:jjtaro_maru:20120428082525j:image

 昭和21年(1946年)3月4日、法制局の佐藤達夫第一部長、終戦連絡中央事務局次長・白洲次郎外務省情報部渉外課・小畑薫良、外務省嘱託の長谷川元吉らはGHQ民政局マッカーサー案をもとに憲法のファイナルドラフトを作成するよう命じられ徹夜で作業して完成させました。このときのことを佐藤達夫第一部長は次のように回想しています。
「無準備のまま、微力事に当たり、しかも極端なる時間の制限ありて詳細に先方の意向を訊し議論を尽くす余裕なかりしこと誠に遺憾に堪えず、やむを得ざる事情に因るものとは云え、この重大責務を満足に果たしざりしの罪顧みて悚然(しょうぜん)たるものあり、深く頂(こうべ)を垂れて官邸に入る」
 GHQの押し付けに必死で抵抗したものの、"力足らずで申し訳なかった"と詫びています。佐藤達夫は「外国人ハ平等ニ法律ノ保護ヲ受クル権利ヲ有ス」という条文をGHQと交渉の末に削除に成功するなどの奮闘をみせました。
 GHQ憲法ファイナルドラフトが完成した後も口語化された草案の字句について白洲次郎、佐藤達夫らはGHQと交渉しています。その中に次のような記録があります。
(第十三条)「凡ベテ自然人ハ--」(All natural persons are)トアルヲ「凡ベテ国民ハ--」ト改ム
(第二十四条)本条中「何人モ」(every person)トアルヲ「凡ベテ国民ハ」(all people)と修正ス
(第二十五条)「何人モ」(all persons)トアルヲ「凡ベテ国民ハ」(All people)ト修正ス
 英語原文からの修正箇所について説明したものですが、All natural persons are、every person、all personsといった箇所を「国民」としたのです。
 口語政府
第十三条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別を受けない。
華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
第二十四条 すべて国民は法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
すべて国民は、その保護する児童に初等教育を受けさせる義務を負ふ。初等教育は、これを無償とする。
第二十五条 すべて国民は、勤労の権利を有する。
賃金、就業時間その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
児童は、これを酷使してはならない。
 必死の日本化が図られた跡が伺えます。「何人も」とすれば日本に住む外国人まで含むと解釈される可能性があります。外国人の保護は条約や下位の法律によって定めればよいものです。憲法には不要です。
 さらにマッカーサー案にも政府草案にも無かった条文が7月29日第90回帝国憲法改正案委員小委員会で挿入されることになりました。現在の第十条です。
第十条 日本国民たる要件は、法律でこれを定める。
 定めた法律が「国籍法」になります。つまりGHQ憲法中の「国民」は「日本国籍を有するもの」と明確になったわけです。このとき、国会では特段に問題になっていません。
----- 国会議事録
○芦田委員長 第三章に入ります、社会党の草案を私不勉強で能く見て来なかつたのですが、進歩党及び自由党の方から出て居る「国民たるの要件は法律を以てこれを定む」と云ふ案がありましたが……
○鈴木(義)委員 我が党の提案にもそれが入つて居ります、是は殆ど各党の提案に入つて居ります
○芦田委員長 それでは文字をどう書くかと云ふ問題で、此の点は各党共通の修正になつて来る訳ですな、さうすると佐藤さん、どう云ふ風に書けば宜いのですか、現行法の通りで宜いのですか
佐藤(達)政府委員 「日本国民たる要件は法律で」……
-----
 やはり佐藤達夫が絡んでいました。この10条の「日本国民」の英訳はJapanese nationalとしました。GHQはJapanese peopleが「日本国民」だと思っていますから、気付かなかったのです。Japanese peopleもJapanese nationalも日本語では「日本国民」なのです。したたかなテクニックでした。
 「日本国民」とは何ぞや、これが明確になってなければ、外国人に日本国民の財産をむしりとられるところでした。現在、外国人参政権が叫ばれたり、外国人への生活保護支給、朝鮮学校無償化が問題になっているでしょう。これに歯止めがかかっているのは、あの時GHQ憲法に必死に抵抗した白洲次郎、佐藤達夫らの日本人がいたおかげでした。


参考文献
 講談社文庫「占領を背負った男 白洲次郎」北康利(著)
 岩波現代文庫「日本国憲法の誕生」古関彰一(著)
参考サイト
 国立国会図書館
  3-26 新憲法草案修正に関するGHQとの交渉
  帝国議会議事録検索システム http://teikokugikai-i.ndl.go.jp/
   90-衆-帝国憲法改正案…-4号(回) 昭和21年07月29日
添付画像
 国会議事堂帝国議会議事堂) 2010年12月1日JJ太郎撮影(PD)
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