2012-04-26
GHQ憲法に抵抗した人たち
白洲次郎だけでなかった。
昭和21年(1946年)3月4日、法制局の佐藤達夫第一部長は松本蒸治国務大臣から「翻訳を一緒に手伝ってくれないか」と声をかけられ東京第一生命ビルのGHQ民政局に足を踏み入れました。そこには終戦連絡中央事務局次長・白洲次郎、外務省情報部渉外課・小畑薫良、外務省嘱託の長谷川元吉がおり、GHQ民政局側はホイットニー局長、ケーディス次長ほかハッシー、ラウウェルといった数名の将校が顔をそろえていました。日本側はここで憲法のマッカーサー案を基に作成した、松本案(3月2日案)を翻訳し、GHQへ説明しました。
マッカーサー案(訳)
Article I. The Emperor shall be the symbol of the State and of the Unity of the People, deriving his position from the sovereign will of the People, and from no other source.
(第一条 皇帝ハ国家ノ象徴ニシテ又人民ノ統一ノ象徴タルヘシ彼ハ其ノ地位ヲ人民ノ主権意思ヨリ承ケ之ヲ他ノ如何ナル源泉ヨリモ承ケス)
Article II. Succession to the Imperial Throne shall be dynastic and in accordance with such Imperial House Law as the Diet may enact.
3月2日松本案
松本案を英語に翻訳し始めましたが、第一条からすぐケーディス大佐から文句がつけられました。松本案は天皇の地位について「人民ノ主権意思ヨリ承ケ」を「日本国民至高ノ総意」と表現していました。また、皇室典範については「国会ノ制定スル」を省きました。松本国務相は商法学者として高名で憲法とは無縁でしたが、憲法問題調査委員会の委員長であり、憲法学者らと議論を重ねていました。「主権」という無限定な権限を付与することは危険だということを知っていたのでしょう。このときはケーディスも松本国務省の操作には気付かなかったようです。後に気付かれて反撃を食らっていますが・・・第二条についてもケーディス大佐が文句をつけてきました。「国会ノ制定スル」を削っていたからです。
松本「第一条で国民の総意に基づくと書いてあるのだから、"之ヲ他ノ如何ナル源泉ヨリモ承ケス"などという文章をわざわざ入れる必要はないでしょう!」
松本「自明のことを削除して何が悪いんだね!」
小畑薫良「白州さん、シンボルっていうのは何やねん?」
白洲次郎「そこにある井上の英和辞典引いてみたら?」
小畑薫良「やっぱり白州さん、シンボルは象徴やね」
第十六条 外国人ハ平等ニ法律ノ保護ヲ受クル権利ヲ有ス
3月2日松本案
第十四条 外国人ハ均シク法律ノ保護ヲ受クルノ権利ヲ有ス。
その結果の3月5日案
憲法改正草案要綱 佐藤達夫文書 46
現在、生活保護目当てで日本に入国する外国人があとをたたず、年金に加入していない外国人が生活保護で老後生活をしたり、外国利権で動く政治家がおり、日本国民の財産がむしりとられている状況を考えると、もしGHQ憲法に直接外国人保護規定が残っていたらと想像すると背筋が寒くなります。あっぱれ、佐藤達夫。
佐藤達夫は2日連続で徹夜し、3月6日の朝、高円寺の自宅へ向かいました。高円寺の坂を上る途中、奥さんが「あなたっ」と駆け寄ってきました。佐藤は「心配かけたな」と一言だけいいました。家では子供たちが「おかえりなさい!」と迎えました。佐藤はGHQで出された角砂糖2個、キャラメル3個、ゼリービーンズをポケットから出し、子供たちに渡しました。
参考文献
岩波現代文庫「日本国憲法の誕生」古関彰一(著)
参考サイト
国立国会図書館
3-20 日本国憲法「3月2日案」の起草と提出 http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/03/086shoshi.html
3-21 GHQとの交渉と「3月5日案」の作成 http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/03/089shoshi.html
3-22 「憲法改正草案要綱」 の発表 http://www.ndl.go.jp/constitution/shiryo/03/093shoshi.html
添付画像
にほんブログ村 クリックで応援お願いします。