Quantcast
Channel: 電脳工廠・兵器(武器,弾薬)庫
Viewing all articles
Browse latest Browse all 8971

[転載]敬重すべき二つのやまとことば 「皇室と国民」

$
0
0
敬重すべき二つのやまとことば

「しらす」と「うしはく」


世界平和の鍵ともいうぺき二つの、やまとことばを読者の皆さんに御紹介
したいと思う。私がここで、やまとことばというのは、中国語の影響をうけて
いない純粋な日本人固有の言葉という意味である。
(註)文中横書きの数字は天皇の歴代数及び西暦年数を示す。


日本に現存している最古の歴史物語本に古事記(こじき)というのがある。
これは第43代元明天皇の和銅五年712にできたものであるが、実はこれ
よりも以前、第33代推古天皇の御代620に聖徳太子が編修された天皇記
(すめらみことのふみ)・国記(くにつふみ)等があったが、大化改新の擾乱
645のとき、惜しくも焼失してしまったので、何が書かれていたか不明という
ことになっている。


ところが、ここに第34代舒明天皇(在位629一641)の皇子に大海人皇子
(おおあまのおうじ)と申すお方がある、お生れは620、生来歴史が非常に
お好きなお方であったから、大化改新の擾乱以前に、この青年皇子は既に
十分に、この天皇記.・国記等を調査研究しておられたに相違ない。この
大海人皇子が後の天武天皇(在位673-686)であるから天皇記等の焼失
したことを残念に思われ、何とかしてこれの復元を試みられたであろうことは
想像に難くない。


それで天皇の近臣で聡明な上に記憶カも強靱な稗田阿礼なる二十八歳の
人物を撰んで彼に御自身の記憶や研究の結果を口授して記憶せしめられた。
この阿礼が幸いにも長寿を保って元明天皇(在位708-714)の御代まで
生存していたので、天皇は学者大安麻呂(おおのやすまろ)に命じて阿礼の
口述を筆録せしめられた、これが有名な「古事記」である。


この古事記のうちに左記のような一文がある。これによると高天原においで
になる天照大御神が御子孫を葦原(あしはら)の中国(なかつくに)即ちこの
日本に遣わされるに先立ち、国状調査のため調査団を派遣されたのである
が不幸にして第一隊も第二隊もともに失敗して帰ってこない。そこで第三隊の
隊長として選ばれたのが建御雷神(たけみかずちのかみ)という人物、彼は
万難を排して今の島根県出雲の海岸に上陸することに成功した。


そこで彼はその地方の領主である大国主神(おおくにぬしのかみ)に面会して、
従来から彼(かれ)大国主神が領有支配しているこの葦原の中つ国(即ちこの
日本)を天照大御神の御子孫に譲ってくれないか、という交渉を始めた。この
とき建御雷神が大国主神に向って発言した言葉を古事記は左のように書いて
伝えている。

ながうしけるあしはらのなかつくには あがみこのしらさむくにとことよさせたまえり
汝之宇志波祁流葦原中国者、     我御子之所知国言依賜、

かれながこころいかにぞ
故汝心奈何。


(あなたが治めて((うしはいて))おらるる葦原の中つ国は、わが御子の治める
((しらす))べき国であると((天照大御神))が申されているが、あなたのお考は
いかがであるか、承りたい)


古事記が作られた時代は、日本にはまだ平仮名(ひらがな)も片仮名(かたかな)
もない時代であるから、阿礼の口述するやまとことばを筆録する安麻呂としても
随分苦労したことであろう。「うしはく」ということばも「しらす」ということばも共に
国を治めるという意味であるから、中国から来た漢字で治.領・統・牧・御などの
字を使えば一応意味が通じることは通じるけれども、これでは日本人の気持ち
にしっくりこない、つまり君主と国民との間柄が日本と中国とでは、いささか違う。
日本人が考えるような君主の気持ちを云い表わす適当な言葉を中国人は持ち
合わせないのだ。阿礼の口述を筆録する安麻呂の苦心はここにあった。


そこで彼は、日本人の天子が国を治める心持ちをいい表わす適当な中国語
(漢語)が見付からないので、やむなく万葉仮名(まんようがな)によって、
やまとことばをそのまま使用するより他に方法がなかったのだ。安麻呂は
この方法によって急所、急所を抑えた。これが古事記の特徴の一つである。

(註)万葉仮名というのは漢字の音を単なる発音記号として利用し、例えば
「うしはく」を「宇志波久」と書くように。前述のように「うしはく」も「しらす」も
共に国を治めるという意味ではあるけれども、


何故に建御雷神が殊更に「あなたはうしはく」「わが御子はしらす」と言葉の
使い分けをしたのであろうか。


本居宣長翁(1801歿七十二歳)はその生涯を古事記の研究に費やした
徳川時代の有名な国学者であるが、その著「古事記伝」のうちに書かれて
いる説明によれば、


うしはく - 或る地方の土地・人民を我が物として即ち我が私有物として
        領有支配すること。


しらす ー  人が自己以外の外物と接する場合即ち、見るも、聞くも、臭ぐも、
        飲むも、食うも、知るも、みな自分以外にある他め物を、我が身
        の内にうけ入れて、気持ちの上で、他の物と我とが一つになる
        こと即ち自他の区別がなくなって一つに溶けこんでしまうこと。


   続く



       元侍従次長 木下道雄 著 「皇室と国民」より



転載元: サイタニのブログ


Viewing all articles
Browse latest Browse all 8971

Trending Articles



<script src="https://jsc.adskeeper.com/r/s/rssing.com.1596347.js" async> </script>