![安倍晋三首相(中央)は“ストライク”。左は投手の松井秀喜氏、右は打者の長嶋茂雄氏]() |
始球式で審判を務めた安倍晋三首相(中央)は“ストライク”。左は投手の松井秀喜氏、右は打者の長嶋茂雄氏
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安倍晋三首相は5日、長嶋、松井両氏への国民栄誉賞授与式に出席し、表彰状や記念品の金のバットなどを贈呈した。巨人―広島戦の始球式では、背番号「96」のユニホーム姿で球審を務めた。背番号は第96代首相にちなんだとしているが、憲法改正の発議要件を緩和する96条の先行改正を掲げており、ちゃっかり“アピール”した格好となった。
グラウンドに敷かれた赤じゅうたんの上で、長嶋、松井両氏に表彰状などを贈った首相。あいさつで「長嶋さんが演じた数々のメークドラマはアンチ巨人だった私も手に汗握りながらラジオに耳を傾けていました」と明かすと、客席から笑いやどよめきが起きた。「日米ファンの度肝を抜いた松井選手の大きなホームラン。2人の活躍は日本人に勇気を与えた。文句なしの国民栄誉賞、皆さんそう思いませんか?」と観客に呼び掛け、大きな拍手を受けると満足げに客席を見渡した。
続いて行われた始球式は「審判、総理大臣安倍晋三、背番号96」のアナウンスで登場。長嶋、松井両氏から手渡された巨人のユニホーム姿で審判を務めた。
終了後、スポニチ本紙などの取材に応じ、初めて体験した審判について「ファウルチップで飛んできたらどうしようかと思った」と笑顔で振り返り上機嫌。ユニホームの背番号が「96」だったことで「改憲へのアピールでは」(自民党中堅)との臆測も呼んだが、首相は「96代(首相)だから」と説明。記者団から「改憲のアピールになった?」と指摘されると「結果としてね。運命とはこういうものだから。ハハハハ」と笑った。
一方、公明党幹部は「背番号9(9条)でなくて良かったが、国民みんなが祝う国民栄誉賞に関係する行事で、政治的な意図をアピールするのはいかがなものか」と苦言を呈した。
授与式はたいてい官邸で行われ、今回は異例ずくめ。大観衆の前で長嶋、松井両氏の人気にあやかって政権を盤石にしようとの“人気取り”の側面は隠せず、首相が授与式のあいさつで、アベノミクスと呼ばれる経済政策の「三本の矢」を念頭に「みんなが夢に向かって頑張っていくことこそが“4本目の矢”になると信じている」と政治色をにじませる場面も。東京電力福島第1原発事故で避難している子供たちも、グラウンドに招かれていた。政府関係者からは「参院選に向け政権の明るいイメージを維持させたいのだと思う」という声も聞こえた。
【日本国憲法 第96条】1 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。