【すごいぞ!ニッポンのキーテク】
強度と軽さでパワーアップ 「インフィニティ」採用の自動車向け超ハイテン材
日産自動車は、強度が1.2ギガ(1200メガ)パスカル級の超高張力鋼板(超ハイテン材)を新日鉄住金、神戸製鋼所と共同開発した。従来のハイテン材より高い強度と軽さを実現したうえ、複雑な形状でも加工しやすいのが特徴。今夏に北米で発売される高級ブランド車「インフィニティQ50」への採用を皮切りに、超ハイテン材の採用車種を増やしていく計画だ。
「新開発の超ハイテン材は、従来(のハイテン材)より強いのに軽く、コストも安い。さらによく延びる。車体が軽くなることで燃費向上にも貢献できる」
日産の鈴木伸典・車体技術開発部長は、2008年から開発に取り組んできた1.2ギガパスカル級高成形性超ハイテン材の優位性をこう説明する。
ハイテン材は炭素やシリコン、マンガン、チタンなどを配合して引張強度を高めた鋼材のことで、一般鋼材より薄く軽くすることができる。国内では20年ほど前から開発が進められてきた。
最近では780メガパスカル以上という超ハイテン材を自動車部品に採用することも増えてきたが、1.2ギガパスカル級を採用するのは日産が世界で初めてだ。インフィニティQ50では、センターピラーなどの車体上部に使うことで従来車より11キロの軽量化を実現した。
高機能化することで鋼材の単価は上がったものの、1.2ギガパスカル級の超ハイテン材は同じ強度の鋼板に比べて板の厚さが45%も薄く、1台当たりの鋼材使用量が減った。さらに薄くても補強材を必要としないため、結果的にコストを削減できる。
ハイテン材は強度を上げると加工しにくくなる欠点があるが、新日鉄住金と神戸製鋼が金属組織を最適化した。一方で、日産は超ハイテン材に最適な金型やプレス成型技術を開発した。これにより、これまでの超ハイテン材では不可能とされていた高い加工性を確保できた。既存の生産ラインでそのまま成形できるのも大きなメリットだ。
日産は、17年以降に発売する新型車への超ハイテン材使用比率を13年時点の9%から25%まで引き上げるとともに、車体重量を05年度比で15%軽量化する目標を掲げる。鈴木部長は「Q50では乗員を保護する車体上部に採用したが、今後は床など下部にも使いたい」と話す。
超ハイテン材の採用車種については、高級車に限らず「(新興国向けの低価格車)ダットサンブランドも含めて世界の全モデルに展開する」(鈴木部長)方針だ。
日産だけでなく、自動車各社は車両の軽量化に積極的に取り組んでいる。
トヨタ自動車が昨年12月に発売した高級セダン「クラウン」は、エンジン排気量をダウンサイジングしたほか、ハイテン材の採用部位を拡大。これにより、最大200キロの軽量化を達成した。
ホンダは、鉄とアルミを結合したドアを生産する新技術を確立し、ドアの重量を約11キロ軽量化。スズキは、軽「アルトエコ」の部品を徹底的に見直すことで20キロ軽くし、ガソリン1リットル当たり33.0キロの走行を実現。燃費性能は、トヨタのハイブリッド車(HV)「プリウス」の32.6キロを上回った。
コンマ1キロをめぐる低燃費競争が今後も続くのは間違いない。その中で、燃費向上に欠かせない軽量化技術の役割もますます大きくなりそうだ。 (古川有希)
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ハイテン鋼とは引張にも圧縮にも強い、強度の高い鋼であり、変形がしにくいものです。鉄にマンガン、シリコン、モリブデン、ニッケルなどを微量添加し、焼き入れ・焼き戻しを工夫して製造されます。
ハイブリッドになろうが、EV(電気自動車)になろうが、軽量化は自動車に必須であり、むしろこのコンセプトを疎かにする外国の企業の感覚はどうかしているんじゃないかと思います。日本人は技術者はもとより消費者も品質へのこだわりがとても強いです。
ハイブリッドになろうが、EV(電気自動車)になろうが、軽量化は自動車に必須であり、むしろこのコンセプトを疎かにする外国の企業の感覚はどうかしているんじゃないかと思います。日本人は技術者はもとより消費者も品質へのこだわりがとても強いです。
一方、米国の自動車産業は、なぜ衰退したのかという反省がないままで米国政府を通じて日本に圧力をかけてきているのは情けない限りです。