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捷一号作戦

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海軍は戦争する気がなかった?

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 捷一号作戦は昭和19年(1944年)10月23日から同25日にかけて米軍のレイテ上陸を阻止する日本軍の作戦名です。おとり作戦とよく言われますが、日本海軍の機動部隊(小沢部隊)が米機動部隊を牽制し、戦艦を中心とした水上砲撃部隊(栗田艦隊、志摩艦隊、西村艦隊)を米軍上陸地点に送り込み、輸送船団及び上陸した部隊を攻撃して米のフィリピン奪還を頓挫させる作戦です。

 10月23日、戦艦大和、戦艦武蔵を擁する栗田艦隊は米潜水艦の魚雷攻撃を受け、旗艦の愛宕が沈没。このため指揮システムを新たに構築しなければならず、通信不備の原因となります。
10月24日、シブヤン海に入った栗田艦隊は米艦載機延べ246機の攻撃を受け、戦艦武蔵は沈没。栗田艦隊はレイテ突入を断念し、反転します。しかし、連合艦隊司令部から激励電文が飛び、また反転してレイテへ向かいます。

 おとりとなった小沢機動部隊は米機動部隊(ハルゼー艦隊)を発見し、少ない艦載機で攻撃を開始。ハルゼー米機動部隊はおとりに食いついてきます。しかし、小沢艦隊の旗艦・瑞鶴の通信設備に不具合があり、攻撃機発進の電報は栗田艦隊にも連合艦隊司令部にも打電できませんでした。栗田艦隊はおとり作戦がうまくいっていることを知ることがでなかったのです。

 10月25日未明、西村/志摩艦隊はレイテ湾へ突入し、オンデンドルフ艦隊に迎撃され、ほぼ全滅しました。(スリガオ海峡海戦)

 栗田艦隊は25日夜明けにサマール島沖に進出し、米護衛空母艦隊(スプレイグ艦隊)を発見。米艦隊は速力が18ノットで逃げ切れることができず、全滅は時間の問題でした。戦艦大和、長門、金剛、榛名が護衛空母艦隊を蹴散らした後、レイテに揚陸中の米輸送船団約80隻を撃滅する予定でした。しかし、栗田艦隊は護衛空母1隻と駆逐艦3隻を撃沈したところで反転北上。謎の大反転といわれるものです。この後、主砲射撃指揮所旋回手は敵主力艦(テネシー、カリフォルニア、ペンシルバニア)を発見し、主砲射撃準備までできていました。しかし、艦橋からは何の指令も無く、無言だったといいます。なぜレイテに突入せず、反転したのか?栗田長官は昭和52年(1977年)、亡くなるまで沈黙を守りました。

 この戦闘ではちょっとしたエピソードがあり、米駆逐艦ジョンストンは総員退艦して海上に投げ出されたとき、迫り来る日本の駆逐艦を見て、機銃掃射されると思い、もうこれまでと覚悟したそうです。しかし、振ってきたのは缶詰などの食糧と水であり、艦橋には不動の姿勢で立つ艦長が沈み行くジョンストンに向かって敬礼していたといいます。

 栗田艦隊はレイテの米輸送船団を攻撃することなく、米第7艦隊と決戦することもなく、レイテから消えていきました。栗田艦隊がレイテに突入していても日本の降伏が遅れただけだったという意見もありますが、数日後の米大統領選に影響を与えたかもしれず、戦争が長引けば厭戦気分、または共産主義の脅威の台頭など情勢を変える材料もありました。

 結局、連合艦隊は戦力を集中させて総力で米軍を攻撃したことは一度もありませんでした。航空戦力と海上部隊を効果的に連携させて攻撃したことも一度もありませんでした。ガダルカナルでもミッドウェーでも戦艦大和を使うことはありませんでした。これは「温存艦隊」といって戦力を維持して敵に脅威を与え続け敵の侵攻を遅らせるという考えがあったのかもしれません。しかし、戦力を逐次投入していた結果、レイテにおいてその機能さえも無くしてしまいました。


参考文献
 「歴史街道」2009.9『マッカーサーが震えた日』吉田一彦
 WAC「『太平洋戦争』は無謀な戦争だったのか」ジェームス・B・ウッド(著) / 茂木弘道(訳)
 ハルキ文庫「男たちの大和」辺見じゅん(著)
 WAC「『太平洋戦争』こう戦えば・・・」三野正洋(著)
参考サイト
WikiPedia「レイテ沖海戦」

添付画像
 アメリカ軍艦載機の攻撃後、沈みつつある武蔵。第一主砲塔前の甲板は波に洗われているが、煙突の排煙から機関は無事であることが判る(駆逐艦「磯風」から撮影)(PD)

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