もう一度読み返したくなる本
中野剛志氏が言う通り、そのおどろおどろしいタイトルは出版社の編集者が付けたものだという
しかし内容は大学の研究室の師弟が意気投合して語りあっている対談集である。
しかし内容は大学の研究室の師弟が意気投合して語りあっている対談集である。
奇しくも、この師弟は第二次安倍内閣で、師匠の藤井聡京都大学大学院教授が内閣官房参与、弟子の中野剛志京都大学准教授が一足先に経済産業省に復帰している。
両氏とも新自由主義、グローバリズム、TPPには反対の立場である。
両氏とも新自由主義、グローバリズム、TPPには反対の立場である。
まず、東日本大震災の「てんでんこ」の解釈や、震災を体験しても平和ボケが直らない日本人に言及し、ナショナリズム(日本人同士の同胞意識)という精神も東北の人に対する同胞意識も失ってしまったと批判。
たしかに、東京都以外の多くの地方都市が瓦礫の受け入れを拒否したのは、戦後の日本人が軽薄なエゴイストになってしまった証左であろう。
話が飛躍するが、オスプレイの運用に反対する沖縄県も地方主権(分権ではない)を主張する首長もある意味エゴイストである。
たしかに、東京都以外の多くの地方都市が瓦礫の受け入れを拒否したのは、戦後の日本人が軽薄なエゴイストになってしまった証左であろう。
話が飛躍するが、オスプレイの運用に反対する沖縄県も地方主権(分権ではない)を主張する首長もある意味エゴイストである。
第2章では学者・官僚・メデイアの嘘を暴いている。
朝日新聞が「復興のための公共事業はもったいい」といい、「土建国家に回帰」と批判する。
しかし、災害時にめざましく働いたのは東北地方整備局と土建屋だった。
朝日新聞が「復興のための公共事業はもったいい」といい、「土建国家に回帰」と批判する。
しかし、災害時にめざましく働いたのは東北地方整備局と土建屋だった。
「くしの歯作戦」で道路を修復し、自衛隊の重機や隊員が通れるようにした。
マスメディアの公共事業に対する批判が盛んであり、藤井氏の研究室が調査した3.11以前の6ヶ月と以後の6ヶ月の大手5紙の公共事業批判社説を比較すると、朝日新聞が以前も以後もダントツで高い。
日経新聞に至っては3.11後に増えている。他社は前後とも比較的に少ない(65頁)。
日経新聞に至っては3.11後に増えている。他社は前後とも比較的に少ない(65頁)。
藤井氏は公共事業を叩くマスコミはDV男のようであり・・・
「例えば朝日新聞は、とにかく国家に対して非常にネガティブな反応をします。その背景にはマルキシズムの遺伝子があると思います。マルキシズムは、階級闘争を経て資本家の国家を倒し、プロレタリアートの団結した社会をつくることを理想とする。それが国を守る自衛隊を叩くことにつながり、国の象徴である皇族への冷淡な態度を生む。公共事業にたいしてもそうです。公共事業は、国土計画を作り、巨大なお金を使って行う国家のシンボリックな事業なのですから」
なるほどと納得する。
新自由主義は・・・
「市場原理主義ですから、市場を大きくして政府を小さくしたい。いわぱ、新自由主義者は、基本的にすべての政府事業を停止したいと思っているわけで、とりわけ国家的プロジェクトである公共事業を削ろうと考える」
「反国家主義、均衡財政主義、新自由主義の三者が結託して、脱公共事業の世論が形成されていった」
民主党の海江田代表や細野幹事長が「公共事業」を目の敵にするのは基本的に民主党が「反国家主義」だからである。与謝野馨、藤井 裕久は均衡財政主義・・・
新自由主義者の竹中平蔵を安倍首相はお飾りに使っているという噂もある。
新自由主義者の竹中平蔵を安倍首相はお飾りに使っているという噂もある。
「政治論」では橋下徹大阪市長への批判が厳しい。
中野氏は、橋下氏は人気があるから彼を味方にしてTPP反対、増税反対、憲法改正、脱原発でも利用すればいいという人が保守派の中にも居るが小賢しいと批判。小賢しいがゆえに逆に彼に利用されているのだという。
中野氏は、橋下氏は人気があるから彼を味方にしてTPP反対、増税反対、憲法改正、脱原発でも利用すればいいという人が保守派の中にも居るが小賢しいと批判。小賢しいがゆえに逆に彼に利用されているのだという。
安倍首相は橋下氏を利用しようとしているかのように見えるが、ご用心ということか。
たしかに一理ある。
たしかに一理ある。
読み終わった後、もう一度読み返してみたい気になる不思議な本である。
「日本破滅論」(藤井聡 中野剛志 文春新書 770円+税 2012年8月)
【目次】
はじめに
第1章 大震災を食う ━ 危機論
東日本大震災から見えてきたもの/日本人は震災を「食った」か/「てんでんこ」に隠された意味/「釜石の奇跡」を呼んだもの/災害はシニカルな近代主義を拒む/「一つになろう」の偽善/米をシンボルにしてなぜ悪いか
第2章 学者・官僚・メディアの嘘 ━ パラダイム論
震災復興は「もったいない」/朝日新聞の本音と建前/著名なエコノミストの厚顔無恥/意図的に報道されない「くしの歯作戦」/左翼が構造改革に走る理由/内閣府モデルのデタラメ/「TPPで2・7兆円の利益」のカラクリ/学者と官僚の共同謀議/パラダイムの奴隷になった学会/独法化か大学を殺した
第3章 新幹線と失われた20年 ━ 物語論
東海道新幹線の物語/「はやぶさ」が仕分けられないために/「失われた20年」世代の物語とは/デフレの悪化を競う増税論議/専門家は信用できるか/「内需は拡大しない」の誤謬/描けなかった高度成長後の物語/プラグマティズムの思想に学ぶべし
第4章 沈黙のらせんを絶て ━ 政治論
「ぶれない政治」の危うさ/国民は官僚主導を望んでいる?/大衆人の議論の特徴/橋下市長は議論の勝ち負けを競うソフィスト ━ 賢さが裏目の「沈黙のらせん」/日本に漂う閉塞感の正体/軽薄な人気者が招く悲劇/冷戦思考から抜けられない保守派/公務員の特権とは何か
第5章 マクド経済学が世界を蝕む ━ 経済論
リーマン・ショックは経済学も吹き飛ばした/失われた経世済民の志ノマクドナルド化された経済学/田舎者の二流人士が進める構造改革/日本がフィリピン化しないために/適切な程度の自由貿易を求めて
おわりに
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