本書執筆の動機(2006年)
ここで私の仕事について述べることにしよう。もともと私の専門分野は
環境問題のメカニズムを解明する学問(資源物理学)で、大学生のとき
から現在に至るまで研究と講演を続けており、環境に関する入門書の
出版も予定している。
そしてもう一つ、これはボランティアであるが、平成14年から財団法人ロング
ステイ財団(鳥居道夫会長、サントリー株式会社名誉会長)の専務理事を
仰せつかっている。この財団は、近年主にシニアが海外に長期滞在する
「ロングステイが盛んになるにしたがって海外でのトラブルも増加しており、
日本人の安全を確保するために情報を取りまとめる機関として、平成4年(1992)に
通商産業省(現経済産業省)の認可を受けて設立された財団法人である。
さて、そろそろ本書について記述しなければいけない。これまで皇室に
関する書籍は多数公刊されてきたものの、皇族の果たしてきた役割に
ついて分かりやすくまとめた本がないため、筆を執ることにした。
本書では「皇族とは何か」というテーマについて掘り下げる。
皇族の役割は多岐にわたるものの、本質的には次の二点に集約されると
皇族の役割は多岐にわたるものの、本質的には次の二点に集約されると
私は考える。
第一に「皇統の担保」、
第一に「皇統の担保」、
第二に「天皇の藩屏(はんぺい)」である。
第一の「皇統の担保」とは、いざ皇統が途絶えそうになったとき、
第一の「皇統の担保」とは、いざ皇統が途絶えそうになったとき、
皇族が皇位を継承するという役割のことで、皇族は皇統の危機に備えて
血のスペアとして存在しているということである。そもそも宮家は
皇統を安定的にするために創設された制度であり、それこそが皇族の
本質的存在意義である。
本書は第一章で実際の皇統断絶の危機に当たり、傍系の皇族が即位した
幾つかの例を示し、皇統を維持するために補足的に機能した女帝について
述べ、そして万世一系がいかに保たれてきたかということを明らかにする。
第二の「天皇の藩屏」とは、天皇の近親者として、天皇を支え、守る
役割のことである。天皇は歴史の教科書に頻繁に登場するが、皇族に
関してはほとんど語られることがない。しかし、日本の歴史上、いつの
時代も皇族がいて、天皇を支え、歴史的に重要な役割を担ってきた。
皇族を語らずして日本の歴史を語ることはできない。そこで、本書は
皇族がどのように 天皇を支えきたのかを明らかにするため、
第二章から第四章にかけて、太平洋戦争開戦から占領期にかけての
皇族について掘り下げる。
皇室典範改正議論の中で
,
,
近年盛んに皇室制度改革が議論されるに至り、日本の歴史を振り返る
ことなく、あまりにも軽々しく意見が交わされている現状に危機感を
覚えている。皇系断絶の危機は数か月後や数年後に訪れるものではない。
結論を急がずとも、年単位で国民的議論を経てから決めても遅くは
ないはずである。私はこの本を一人でも多くの方に読んでいただき、
皇室について理解を深めてもらいたいと願っている。
以下省略
注:第一章 皇統の担保はすでに掲載したので
第二章の「天皇の藩屏(はんぺい)」特に終戦時の皇族を掲載したい。