12/13日付 | ニュース トップ |
宮崎県日向灘で機雷・掃海訓練 海を守る"技"磨く ヘリの中で待機するEOD(水中処分員)たち。左がリーダーの崎田1曹、ヘルメットを装着した手前の2人が重富1曹(左)と柳田3曹 へローキャスティング中のMCH101掃海・輸送ヘリ 日向灘で掃海訓練中の掃海艇「まえじま」 「つしま」に搭載された深深度用の機雷処分具S7 海自掃海部隊が米海軍と共同で行っている機雷・掃海訓練が今年も宮崎県の日向灘で実施され、全国から掃海艦艇が集結した。9月にはペルシャ湾で行われた米主導の国際掃海訓練に「うらが」と「はちじょう」が参加するなど、海自掃海部隊への国際的期待がますます高まるなかで実施された今回の共同訓練。11月27日、掃海艦「つしま」に同乗し、誇りを持って掃海業務に取り組む隊員らの姿を目の当たりにした。(若林祥子記者) 隣り合わせの危険とやりがい 訓練期間は11月17日から30日の約2週間。訓練統制官は徳丸伸一掃海隊群司令。MCH101掃海・輸送ヘリなど航空機や米海軍の水中処分隊員が加わり、機雷敷設や掃海、日米水中処分員による掃討など多岐にわたる訓練が行われた。 出発地は古くは木材の積み出しやマグロ漁で栄えた油津港。昔ながらののんびりした港町には「歓迎 海上自衛隊」の張り紙がいたる場所に。 掃海艦「つしま」に乗り組むと艦内や甲板ではブルーの作業着の乗員が忙しそうに出港作業を行っており、しばらくして艦は深い緑の海面に滑り出した。空は澄み渡り、キリリと冷えた潮風が心地よい。 「つしま」は一路、日向灘の掃海訓練現場で待つ掃海母艦「ぶんご」に向かう。 かなり船体が揺れているように思ったが、「今日は鏡のような水面です」とのこと。10月の観艦式で乗った護衛艦とは異なり、小さな掃海艦はよく揺れるようだ。甲板はところどころ、木の肌が露出しているが、遠くから見るととても木製の艦には見えない。 途中、掃海訓練中の掃海艇「まえじま」や「いずしま」に会合、遠くの方にもたくさんの艦艇が見えた。海からの水蒸気でかすむ船体には「UY」旗と「PB」旗の国際信号旗が鮮やかに翻り、「掃海訓練中」だということを知らせている。 訓練掃海艇からは赤と緑の旗のついた2本のケーブルが延び、掃海具をけん引しての機雷排除訓練が行われていた。約1時間半の航海を終えたころ、「ぶんご」が視野に入ってきた。 ◇お家芸 「艦首方位56度、ゆっくり左にふれる」「全員配置につけよ」「艦首方位54度、わずかに左にふれる」「艦尾のふれなーし」「艦尾わずかにふれる」「艦尾左にふれる」「ピーッ守れー」「ピピーッ艦尾寄りまーす」「国旗上げピピピーッ」 前後左右から多数の声が飛び交い、「つしま」はゆっくりと「ぶんご」への横付けを開始した。綿密なコミュニケーションが必要な作業に息をのんだ。横付け訓練は、洋上補給や物資・人の輸送などに欠かせない。国際訓練では、海自の"お家芸"だ。 続いてハイライン作業。「ぶんご」の乗員がサンドレッド(ロープの先のおもり)を投てきし、徐々にもやいを引き上げていくと、「つしま」はぴたりと「ぶんご」に寄り添った。艦と艦の間に簡易の橋が架けられる。 安定感のない橋をおっかなびっくり渡って「ぶんご」に移乗した。 ◇蜘蛛の糸 ヘリコプターから延びた一本の綱。芥川龍之介の『蜘蛛の糸』を彷彿とさせるそのロープは海面まで延びており、黒い人影がするすると降りていくのが見えた。訓練中のEOD(水中処分員)だ。ヘリのメーンローターが海面を激しくかき乱し、風でロープがゆらゆらと揺れている。やがて彼の姿は、白濁した水の中へ消えていった。訓練と分かっていても、見学者の間にピリピリとした緊張が伝わった。 「ぶんご」に移乗した後、MCH101掃海・輸送ヘリに乗り、EODの訓練を上空から見学した。 EODは3人一組でチームを組み、指示を与えるリーダーと作業に当たる2人の構成で機雷掃討を行う。生身で機雷に近づき、爆薬を仕掛けて戻ってくるという命懸けの任務だ。 ◇水中活動 この日は2掃海隊の「ひらしま」所属の崎田健1曹、重富竜次1曹、柳田丈明3曹が訓練に当たった。3人のヘルメットには「がんばれ 東北」のシールが。「ひらしま」は東日本大震災で宮城県の牡鹿半島から気仙沼市にかけての救難・物資輸送などを担当、彼らEODも水中での救助活動に当たったはずだ。 欧州製のヘリ内はかなり広い。2人の操縦士と2人の作業員、それにEODチームと見学者8人が乗り込んでいたが、まだかなりの余裕がある。 掃海ポイントまで近づくと、ヘリの右腹のドアが開いた。リーダーが念入りに指示をし、2人のEODが次々に降下していく。その姿を心配そうに見守るリーダーと作業員たち。1分1秒がこれほど長く感じられたことはない。 やがて水面にEODが顔を出し、大きく手を振るのが見えた。ロープが下ろされる。EODは必死に泳いでロープをつかみ、ヘリ上まで引き上げられた。水浸しの彼らの姿を見てやっと一息つけた。 ◇技術の日本 専門の掃海部隊を持たない米国は海自掃海部隊に大きな期待を懸ける。ある海自隊員は「知識・技術は日本、機械・体力はアメリカ」と言う。「日本の掃海艦はお世辞にも新しい機械とは言えないが、どれもしっかり機能している」と"物持ちの良さ"をアピールしていた。 人の手による掃海への信頼は変わらないものの、掃海艦艇を狙う特別の機雷も登場する中、UUV(無人潜水艇)などの無人ロボットが本格運用されれば、掃海の形も変化せざるをえない。実際に機雷で航路が封鎖された場合、いかに機械と人間とが連携するかが今後の課題となる。 ◇掃海一筋 「自衛隊に入ったきっかけは20数年前のペルシャ湾掃海を(報道で)知ったことでした」――。 「つしま」掃海長の夕川和俊1尉は外国で活躍したいという思いもあり、迷わず掃海部隊を志願。しかし、実際に勉強するにつれ、機雷の恐ろしさが分かったという。「危険な任務ではありますが、いかにうまく遂行するか考えることにやりがいを感じます」と笑顔で話す。 「つしま」は昨年、「ぶんご」と共にペルシャ湾で米英が主催する国際掃海訓練に参加した。うだる暑さの中のペルシャ湾。掃海訓練中は船の中には入れず、上甲板に出ずっぱり。機関長の佐藤和彦2尉とともに、「ひたすら干からびていた」と笑い合う。 「自分たちは訓練で行っていたので安全でしたが、20数年前にペルシャ湾で機雷を処分した人たちはどれほど神経をすり減らしていたことだろうかと」 先輩たちの偉業に思いを馳せ、自らを引き締めていた。 |
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小松救難隊 漁船の5人を救助 |
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<西風東風> |