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「世界のノー」、それが何か?
さて、如何だろうか。
先ずは章題にもした根源的な問いから行こうか。
【Q1】 「我が国の行く末を決める選挙に、「世界の目」「世界の意見」はどれほど影響する/すべき であろうか。」
「影響しない」と言うのはある種理想かも知れない。「我が国の行く末は我が国の事だけ考えて決定する」と言う事であるから。
だが、我が国はこの狭い国土に1億人の人間が相応に高い生活水準で暮らしている。この暮らしをさせる資源、エネルギー、食糧を「自給自足する」算段は今の処無い(※1)から、それは外国=海外との交易・貿易によるほかない(※2)。従って「世界の目」「世界の意見」が、我が国の将来を定める上で影響する事は否めない。
だがそれは、参考意見にとどめるべきである。どこそこのナントカ紙の意見にそのまま従うのは愚かだ(※3)。それは、外国人に参政権を与えるのと同根、あるいはそれ以上の愚行であろう。
逆に言えば「世界の目」「世界の意見」を参考として聞く分には構わない。むしろ大いに推奨されるべきかも知れない。「広ク会議ヲ興シ万機公論ニ決スベシ」とも「智識ヲ世界ニ求メ大ニ皇基ヲ振起スベシ」とも五箇条の御誓文に在る処。五箇条の御誓文は今の日本国憲法と直接の関係はないが、日本の民主主義を明文化した草分けなんだから、今でも有効である/あるべき だろう。
とは言うものの、アメリカ在住の日本人ジャーナリストが取り上げたのは、タイトルに「世界が右傾化日本に「ノー」」とあるぐらいだから「日本の右傾化を批難」する声ばかりで、羅列すると以下の通り。
(A) 『エコノミスト』10月6日号「日本のナショナリズム――ポピュリスト(大衆迎合主義者)に気をつけろ」
A1〉 敗戦以来、アジアの平和と繁栄の力強い源泉となってきた日本が、
A2〉保守派さえも懸念を抱く、石原前都知事の尖閣購入案という右派的ポピュリズムで中国の怒りを買い、かき回されているという。
A3〉安倍元首相の自民党総裁就任により、そうした極右的見解が、今や国政の本流にまで流れ込む可能性があると指摘する。
(B) 『フィナンシャル・タイムズ』(11月19日付電子版)
B1〉 両者とも強烈な個性で知られ、領土問題や原発など、カギとなる政策でズレのある橋下市長と石原氏の連携について、
B2〉上智大学の中野晃一氏(政治学)の弁を借り、
B3〉「真の問題は、政策の違いよりもエゴのぶつかり合いだろう」と結論づけている。
(C) 米ブルームバーグニュース(11月12日付電子版)
C1〉 コラムニスト、ウィリアム・ペセック氏は、個人的見解という但し書きは付いているものの、
C2〉「右翼日本、19世紀に帰る」と題する記事の中で、
C3〉 日本の指導者たちは、軍事大国化へと突き進んだ1800年代と決別できないようだと、痛烈に批判する。
C4〉 次期首相になるであろう安倍氏と石原氏、橋下氏という三大政治家は、
C5〉 機会があふれているダイナミックなグローバル環境に飛び出していくのではなく、
C6〉 国粋主義の下で、日本の内向き化という誤った方向に進もうとしていると、ペセック氏は残念がる
(D) ハーバード大学のジョセフ・ナイ教授も、『フィナンシャル・タイムズ』への寄稿「日本のナショナリズムは、弱さの表れ」(11月27日付)
D1〉 安倍、石原、橋下3氏や日本の世論の右傾化について、同教授は、
D2〉 「真の問題は、日本が国際社会で過度に力を示そうとしているのではなく、
D3〉 弱く、内向きになっていることかもしれない」と分析。
D4〉 20年に及ぶ低成長や財政赤字、米国の大学に留学する日本人が、2000年当時の半分以下に落ち込んだことを挙げながら、
D5〉 「日本は、偉大な力強い国であり続けたいのか。それとも、甘んじて二流の地位へと流されるのか」と、問いかける。
(E) 米国の経済専門テレビ局CNBC(12月4日付電子版)
E1> 6年間で、もうすぐ7人目の首相が誕生する日本は、長きにわたって金融緩和を行いながら、
E2> いまだに停滞から抜け出せないどころか縮小していると指摘。
E3> 毎年、10%ずつ膨らみ、国内総生産(GDP)比で220%余りに達した先進国中最悪の公的債務残高を例に挙げ、
E4> 欧州も米国も日本の状況に比べたら、まだ序の口だが、日本を警報とすべきだという。
以上大凡五者(※4)の「世界の意見」が例示されているが、良く読むと言うと、当該記事タイトルの様に「右傾化日本に「ノー」」と言っているのは、どう拡大解釈しても上記の(A) 、(C)、(D)三者でしかない。
上記(B)は「日本維新の会の内紛原因」しか述べておらず、維新の会が注目を浴びているのは事実だが日本の政局とも日本の針路ともほとんど関係ない。石原慎太郎氏が党代表に就任したから「右傾化」と表現する事は辛うじて出来ようが、内紛に右も左もなかろうが。
上記(E)では日本の経済政策が批判され、以って他山の石とするよう述べているが、これまた「日本の右傾化」とは全く何の関係もないし、第一、引用されている範囲では「日本批判」と言うよりは「欧米への警告」が主眼であろう。
であるならば、「世界のノー」である筈の引用五者の半分近くが、「日本右傾化への批判」ではない、と言う事。「日本右傾化にノー」と言いたいのは肥田美佐子記者自身で、引用・援用した五者は、権威づけのための都合の良い「世界の声」。而してその「都合の良い」筈の引用者からして半分外れなんだから、「公明正大な報道」と言っても良いのかも知れないが…・何やってるんだ、肥田美佐子記者。
<注釈>
(※1) 今の処無いし、過去にもなかった。(※2) 恒常的・平和的手段としては。非常的・平和的でない手段としては、他国を次々併呑して搾取すると言う帝国主義的手法がある。だがそれは、仮に「抵抗皆無」な状態であっても早晩限界を生じる。「白人優越論」がまかり通った帝国主義はなやかなりし頃とは異なり、今は「人種格差」は概念的に否定されている。今の中国は、その限界状態にある、とも言えよう。チベットやモンゴルは苦もなく占領できたが、台湾海峡は未だ渡海できていない。(※3) それを言うならば、誰の意見であれ、どんなに美事な意見であれ、「丸飲み・鵜呑み」と言うのは厳に慎むべきなんだが。民主主義の根本は、「一人一人はまじめに真剣に考えて(少なくとも)投票する」なのだから。(※4) 「大凡」と言うのは、この他に「『エコノミスト』(9月22日号)の特集」が挙げられているから。『エコノミスト』誌そのものは、上記(A)として挙がっているが。
自らの意見は顧みず
半分壊滅している引用五者の後に、ようやく登場するのが肥田美佐子記者自身の意見だ。
その前半部分は「内向き日本」批判であり、この部分は私も首肯できる。ところが後半と来た日には・・・
1〉 最大の経済成長圏であるアジアの安定が損なわれれば、
2〉状況に応じて交渉国や戦略などを変える東アジアでのピボット外交で経済的恩恵を得ようとする米国にとっても厄介だ。
3〉 日中関係の悪化や日中韓のあつれきは、世界経済の足も引っ張りかねない。
4〉 なにより日本は、福島の復興、原発・放射能問題、被ばくした人たちの長期健康管理という最重要任務を抱えている。
5〉 40年にも及ぶ東京電力福島第1原発廃炉への技術的・人的・財政的算段や賠償金の確保すら、いまだにおぼつかない状況だ。
6〉 そんな中、「国防軍」論議や防衛費のGDP1%枠撤廃などで、最大の貿易国である中国や他のアジア諸国を刺激し、
7〉 国際社会を不安にさせることが、義援金やボランティア活動で応援してくれた世界の人々への答えなのか。
8〉 「美しい日本」はけっこうだが、「強い」のは、経済と、復興と危機解決に向けた結束力だけでいい。
なんともはや。
以前取り上げた肥田美佐子記者の同じ「NYレポート」には、「銃を携行する事は悪い事だ」と言う、良く言えば信念、平たく言えば偏見に満ち溢れていたが(※1)、こちらの記事は正に「戦後平和教育の成果」を目の当たりに見るようだな。無論私が「戦後平和教育の成果」と言えば相当な悪口で、その究極形が「鳩山由紀夫」であり「友愛の海」なのだが。
先ず上記6〉~7〉から行こうか。
【Q2】今現在、東アジアに於いて「国際社会を不安にさせている」のは「「国防軍」や防衛費のGDP1%枠撤廃を議論している日本」なのかね。
もし「そうだ」と言うのならば、
【Q3】チベット、モンゴルを併合したが未だ抗議の焼身自殺が後を絶たず、東シナ海南シナ海で勝手な「核心的利益」宣言を出し、我が尖閣諸島をも「核心的利益」と称し始めて侵略を公言してはばからず、ここ数十年間二ケタ成長率で「国防費」を大成長させてきている中国は、一体何と評するのかね。
「最大の貿易国」?言う事はそれだけかぁ?
上記1〉~3〉は、相応に正論だ。「相応に」と言うのは「世界経済の足」や「米国の厄介」よりも、優先すべき事項が我が国はあるから、だ。それは広義には我が国の自存独立であり、狭義には我が領土領海領空主権の保全だ。如何に「日中関係が悪化」しようとも、如何に「日中間のあつれき」が生じ様とも、主張すべき事を主張して来なかった事が、今日の体たらくである。それこそが、「日中友好」「日韓友好」の「輝かしい実績」であり、端的に言って「外交的敗北の連続」である「謝罪土下座外交」の成果と言うべきである。
上記4〉~5〉もふざけた理由だ。我が国が自存自衛するからこそ、被災地の復興も、健康管理も成り立つ。我が国が他国の侵略を被っては、例えその占領国によって震災復興や健康管理が為ったとしても、それは「我が国が為した事」ではない。国家の自主独立や国防よりも震災復興や健康管理が優先するなんて、馬鹿も休み休み言うが宜しかろう。
挙句の果てが、上記8〉と来たモンだ。笑わせてくれる。
我が国は、かつて世界三大海軍国の一つとして、世界に7隻しかない16インチ砲戦艦・七姉妹の内二隻を擁していた。その片方は七姉妹が長姉・長門だ。我が国は必要とあれば軍事力だろうが外交力だろうが、「強く」あるべきだ。「最強」である可きならば、「最強」を目指すべきだし、それはある所までは可能だ。
ハナッから「経済と危機解決に向けた結束力だけ」しか「強くしない」と言うのは、それこそ「内向きの日本」では無いのかね。
<注釈>
(※1) 公平に言えば、銃は道具。使うのは人。人が銃を携行する事自体に、善悪なんて倫理的判断が入り込む余地は無い。