三) 日本共産党の対応 昭和50年
ー「教師聖職論」「公務員公僕諭」「ポルノTV批判」ー
この一般国民の不満さ、さらに不安さお敏感に、握(つかま)え声なき国民の
代弁者の役目を果しているのは最近の共産党ではあるまいか。目的は日本
の革命にあり、日本国家の潰滅(かいめつ)にある。そのためには手段、方法
を選ばない共産党は、ここ一、二年の間にうわべでは讃嘆に価する声明を天下
に公言し、良識派の人心の機徴を巧みに把握したようだ。
第一は教師聖職論であり、第二は公務員とは国民への奉仕者であるとの自覚を
促し、彼らの年中行事のスト行為にストツプをかけたこと。第三には最近殊に著
しいテレビの深夜放送でのポルノまがいの放映に対して批判を加え、国民道徳
の確立を提唱したこと等である。
第一の点は、杜会党系の日教組主流派が組織当初から、「教員も労働者なり」と
絶叫し、法律無視の政治活動ならびにストを堂々と繰返し繰返しつづけてきたこ
とは衆知の通り。良識ある父兄は常に憂慮してきた点だ。これに対しての痛棒
(つうぼう)である。
最近とみに増加していることだが、心ある父兄がわが子を「日教組」の教師が多
く、その影響の強い公立高校への進学を拒否している状況を、日教組の幹部は
どううけとめているのか。私立高校への入学者増加は、父兄の彼らへの疑惑、
不信のささやかな抵抗である。共産党が聖職諭を提唱したことに対して、父兄は
拍手喝采をおくる。人心の読みの正しさ、親の心情の汲みとりのすみやかさ、
そして実行力のともなう共産党は、憎いまでに見事な先どり合戦で父兄に代って
日教組の主流派へ一矢を報いている。日教組内の共産系組合員たる反主流は
漸時増加をたどっている。
第二の公務員公僕論もまこと有効弾である。親方「日の丸」をいいことに、国民の
税金で給与を得ていることを忘却無視し、不況で納税者の国民が瀕死に苦しんで
いるのを外目にみて、平然と利已の本能をむき出しにストを決行。主人公たる納
税者の存在を抹殺し、生活をおびやかすスト行為は不埒(ふらち)者、不忠者と
非難し、唾棄(だき)する以外に術はないと主張。公務員は国民のサーヴァント
(奉仕者)であることを自覚せよ!とは、まさに国民の心情を代弁した正論である。
国民の声の代弁者である。
第三の巨弾「ポルノTV批判」は国民道徳の確立への一提唱の感すらある。
「救国、革新の国民的合意への道を寛容と相互理解に立って」とのアピールを
発表し、中で戦後三十年問にわたり累積(るいせき)してきた政治、経済、道徳
的危機克服のため、「国民の各階、各層の力を結集した国民運動の結成」を
日本共産党宮本委員長は記者会見で提唱したのは昭和五十年七月三十日で
あった。
なお、会見談では、テレビの公共性を述べ、目にあまる深夜のポルノ放送の退
廃を指摘し、さらに注目に価する(当然のことであるが)発言をしている。「政党は
天下を取ればいいというものでもない。民族的・民主的に健全な精神を育てるよ
う配慮するのは当然であり、従来も健全な教育の実現に(共産党は)努力して
いる云々」と。(東京新聞、50・7.31)。天晴れ!と拍手を送りたい。
「昭和史の天皇・日本」より