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[転載]【自衛隊】維持費、人件費、燃料費が、装備の調達を圧迫

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 本日は、以前より溜まっていた記事の消化として、昨年の東日本大震災の際の記事をご紹介します!
 
維持費、人件費、燃料費が、装備の調達を圧迫
清谷 信一プロフィール】2011年4月22日(金)
 
 前回、自衛隊において、戦車や戦闘機といった正面花形装備ではない装備の充足率、稼働率、備蓄が極めて少ない、クリティカルな状態にあると述べた。現状は、土台や柱をぞんざいにした家に、豪華で重たい屋根を乗せているようなものだ。
 


整備費が調達費を上回る
 
 前回説明したように、無線機など非正面装備は定数を大幅に割り込んでいる。現実問題として、他国の何倍もする高コストな装備や新型戦車など優先順位の低い正面装備向けの予算を削って捻出しないと、これらの装備の定数が確保できないだろう。
 
 しかも、戦車や戦闘機などの正面装備を調達するため予算も1990年をピークに減少を続けている。
 
 我が国の防衛費は約4.7兆円だ。その中で装備調達や維持にかけられる予算は年々減っている。まずグラフ1を見ていただきたい。
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 対して装備の維持整備費用は増加の一途をたどっている。これは現代の装備(兵器)システムが高度化、高額化しており、その維持・整備、あるいは部品代などにも多額のコストがかかるからだ。戦闘機のライフサイクルコストの約6割が維持・整備費である。
 
 部品だけではない。ソフトウェアの更新も必要だ。近年の戦闘機や戦闘車輛の価格のかなりの部分がソフトウェアに充てられている。例えば戦闘機のレーダーを新型に交換する場合、単にレーダーを入れ替えれば済むわけではない。ソフトウェアの変更と動作確認が必要である。これにも多額の費用がかかる。
 
 2005年から装備調達予算と維持整備予算の逆転が始まっている。これは今後も続かざるを得ない。維持・整備にこれだけ巨額の予算を費やしていても、多くの装備において、実戦の作戦行動が不可能なほど稼働率が下がっている。例えば最も装備が充実しているとされている北部方面隊の攻撃ヘリ、AH-Sの稼働率は7~8割程度に過ぎないとされている。
 


高騰する自衛隊員の人件費が装備費を圧迫

 
 それだけではない。装備調達・維持整備費の双方を圧迫する要因がある。

 まず、人件費だ。「防衛省の人件費の自然増」(グラフ2)を見ていただきたい。防衛省の人件費は国家公務員全体の人件費の約4割を占めている。さらに、今後、退職者が増えることによって退職金や若年定年退職者給付金などの支払いのため自衛隊の人件費は大きく増大する。2010年度を基準にすると2011年度は254億円の増、2014年度で653億円増、2018年度では683億円増が見込まれている。
 
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 人件費が多い反面、海上自衛隊では艦艇の乗組員の充足率の低下が問題になっている。護衛艦ですら9割にも達していない。概ね7~8割程度で艦隊を回している。陸自の4人乗りの戦車でも、搭乗員が足りずに2人で動かしていることが少なくない。また装備の整備要員も不足している。これは装備の稼働率の低下の一因にもなっている。
 
 そもそも定員に比して部隊の規模が大きすぎるのだ。部隊の規模を適正なサイズまで縮小するべきだ。定員・稼働率が5割の部隊と、定員・稼働率ともに100パーセントの部隊ではどちらが精強か言うまでもあるまい。
 
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現場の隊員の不足も問題だ
 


燃料費の高騰が、資金不足に輪をかける
 
 装備費を圧迫するもう一つの要因は燃料費の高騰だ。2006年度の燃料費は669億円にすぎなかった。これが資源バブルの煽りを受けて、2009年度予算では、2008年度比54.8パーセント増の1799億円を支出した。2006年度の約3倍に膨れあがったことになる。
 
 その後資源バブルは一段落したものの、2011年度の予算では932億円を計上している。これは2010年度より91億円増えている。
 
 燃料費の動向は今後も予断を許さない。新興国のエネルギー需要が増加し続けることが見込まれている。またアラブ地域における政治の不安定化は原油の供給を不透明にしている。さらに、東日本大震災において発生した福島原発事故によって、「脱原発」のトレンドが定着すると予想される。これまでのような原発ブームは収束し、原発の新規建設が減る。既存の原発にも廃棄されるものが出てくる。
 
 現在の電力需要は太陽発電などの「クリーン・エネルギー」で完全に代用することできないので、火力発電所によって補うことになるだろう。となれば、原油価格は今後も上昇傾向にあると見なければならない。
 
 米軍は、燃料の脱中東依存=脱石油を謳っている。2012年から、空軍の航空機に新しい燃料を採用する。石炭や天然ガスなどを原料にした合成燃料を、既存のケロシン燃料と半々の割合でブレンドするものだ。
 
 海軍では航空機用にバイオ燃料の研究を進めている。同様に、艦艇用の推進システムとして統合電気推進システムの導入を進めている。これにより約45パーセントの燃料費削減が可能だ。現在は、多大な燃料を消費するガスタービン推進システムを使用している。また基地内では電気自動車の導入も進めている。
 
 自衛隊も米軍と同様に脱石油の取り組みを行うと発表している。だが、具体的な進展はほとんどない。
 
 維持整備費、人件費、燃料費の上昇により、自衛隊の装備調達費は今後圧迫される。維持整備費も圧迫され、装備の稼働率が低下するだろう。
 
 結論として、現状の予算のシステム、配分では、自衛隊に有事の即応性は期待できない。歳出の徹底的な削減、コスト削減が必要だ。次回は現状打破の処方箋を探る。


 
※ネット上(主に軍事ブログ『週刊オブィエクト』さん)で、評判の悪い清谷氏の記事ですが、両論併記という趣旨から、取り上げさせていただきました。その点を踏まえて、この記事をご覧下さい。
 
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転載元: ミッドウェー海戦研究所


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