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[転載]マッカーサーとの会談  「占領下の皇族」

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マッカーサーとの会談  
 
 
東久邇宮は厚木でマッカーサー元帥を出迎えるつもりでいた。しかし連合国側
から「日本側の出迎え一切不要」との通達があったため、その日の会見は実現
しなかった。東久邇宮首相とマツカーサー元帥の会談が実現したのは9月15日
であった。

当時、総司令部は横浜税関に置かれていた。元帥は部屋の入口で東久邇宮を
出迎え、椅子を勧め親しく話をした。東久邇宮は「わが国はポツダム宣言を忠実
に実行し、平和新日本を建設するために努力したい」と述べた。

それに対して元帥は日本が進むべき民主主義の方向を示し、「敗戦国の政治は
もっとも困難なことでその再建には大なる忍耐と努力が必要であるから、
総理大臣は一層努力して、この難局を処理してもらいたい」と応じた。二人の会談
は約50分。元帥は宮を部屋の入口まで見送り、握手をして別れた。東久邇宮は
日記に「軍人というよりも、温厚な君子人という政治家型で、初対面によい印象を
得た」と記している。

この日の会談は総理大臣の公式訪問であり、日本と連合国双方に重要な意味が
あった。首相と元帥は今後の日本の行く末についての考えを語り合い、両者の
意見に大きな違いがないことを確認したのだった。会見から二日後の9月17日、
マツカーサー元帥は初めて東京の米国大使館に入り、第一生命ビルが総司令部
とされ、星条旗が掲げられた。

東久邇宮が次にマッカーサー元帥と対面したのは9月29日のことである。
宮は「私は封建的遺物である皇族であるから、私が内閣を組織していることは、
民主主義の見地からいけないのではないか。もし元帥が不適当とみられるならば
、率直にいけないと言ってください。私はあすでも総理大臣をやめます」と言うと、
元帥はしばらく参謀長と小声で話し合った後「あなたの思想、言行は非民主主義
とは思われない。現にあなたが総理大臣を務めているのは、現実に封建的で
なくて、もっとも民主主義的のことである。あなたは続いて総理人臣を務める
べきでしょうと答えた。
 
 
宮は続けて「もし元帥において、この内閣の政策に対し、不満の点があれば言って
ください。また今の大臣のうちに、不適当と考えられる人があれば、言って下さい。
ご希望のごとくいつでも替えます」と述べ、これに対して元帥は「今の内閣の政策
は連合国側としても満足しています。また今の内閣の大臣を替える必要はあり
ません」と答えた。

東久邇宮首相とマッカーサー元帥の間には信頼関係が築かれつつあったとみえる
。しかし、この信頼関係も間もなく崩壊することになる。東久適宮は9月18日
首相官邸大広間で百余名の外国記者団に囲まれ、インタビューに答えていた。
東久邇宮首相が外国人記者からインタビューを受けるのはこれが最初だった。
日本での縛(しば)りを一切受けない外国人記者からは、次々と鋭い質問が
飛んできた。

宮はこの日の日記に「記者団側の質問は、矢継早やで、且つなかなか鋭い
日本語となって、私に通訳されてくる。これに答えるのには、たいへん骨が
折れた」と記したほどだ。質問は米飛行士に対する処刑問題、捕虜の虐待問題に
始まり、戦争責任のありかを追及するものまであった。
 
 
特に「天皇に戦争責任があるか。天皇は真珠湾攻撃を承知していたか。これは
 天皇の許可を得てからやったのか」という質問もされた。当時の日本の記者
では到底不可能と思われる質問も、外国人記者たちはなんの躊躇もなく浴び
せてきたのだった。天皇の戦争責任問題について東久邇宮は「日本憲法では
国務大臣は所管事項について、すべて天皇を輔弼(ほひつ)する責任がある
ことになっているから、天皇に戦争責任はないと答えた。

だが、この記者会見の空気は連合国の日本に対する感情の素直な表現であり、
これこそ「世界の声」であると東久邇宮は理解した。宮は外国人記者との会見を
通じて「世界の声」を具体的に知り得たことは極めて有益だったと著書に記して
いる。

東久邇宮首相は記者からの質問を受けるだけでなく、自らも記者に質問した。
外国記者に、日本に対する感想を求めたのだ。「空襲による破壊の跡が想像を
超えてひどいのに驚いた」一般民衆が、戦争の原因および経過について何も
知らないのを不思議に思った「日本の婦人が各方面に進出しており、すこぶる
優秀なのに感心した」といった感想が寄せられた。

最後に東久邇宮首相は「今日は裁判所で私が訊問されているようだったが、
次回からもっとくつろいでやりましょう」と挨拶し、一同の笑いを誘った。



                                    竹田恒泰著 「皇族たちの真実」より


転載元: サイタニのブログ


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