■8.「なぜ、今日まで生きてきたのか、今、わかりました」
その後、井崎はラバウルを離れ、空母「翔鶴」の搭乗員となった。昭和19(1944)年のマリアナ沖海戦で、敵戦闘機と激しい空中戦の結果、燃料タンクを撃ち抜かれた。もはや母艦にも帰れず、せめて敵機を道連れにしてやれと、体当たりを決意した。
その時、宮部の怒鳴り声が頭の中に響いた。「井崎! 貴様はまだわからないのか!」 同時に幼い弟の顔が浮かんだ。井崎はなんとか敵機の編隊から抜け出し、海面に不時着してから、9時間も泳いで、グアム島に泳ぎ着いた。何度も諦めかけたが、その都度、「兄ちゃん、兄ちゃん」と泣きながら呼ぶ弟の顔が浮かんできて奮い立った。
「しかし本当に私を助けてくれたのは、宮部小隊長だったと思っています」と、ベッドの上で井崎は語った。そして、こう続けた。
__________
実は、私は、ガンです。半年前に、医者からあと3ヶ月と言われました。それがどうしたわけか、まだ生きています。
なぜ、今日まで生きてきたのか、今、わかりました。この話をあなたたちに語るために生かされてきたのです。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
その時、井崎の孫が大きな声で泣き出した。その母親もハンカチで目を抑えていた。健太郎の姉も嗚咽を漏らしていた。
井崎は窓の外の空を見つめて言った。「小隊長、あなたのお孫さんが見えましたよ。二人とも素晴らしい人です。男の子はあなたに似て、立派な若者です。小隊長---、見えますか」
しばらく後、井崎源次郎の訃報を受けとった。焼香の時、孫の誠一を見かけたが、長い髪は短くなり、金髪は黒くなっていた。言葉は交わさなかったが、健太郎に深々と頭を下げた。
健太郎の中でも変化が起こっていた。しばらく諦めていた司法試験にもう一度挑戦してみようという気になっていた。かつて人々のために尽くしたいと弁護士を志した気持ちを取り戻したのだった。
家族や世のため人のために自分の命を使おうと思えばこそ、その大切さに気がつくのである。
その後、井崎はラバウルを離れ、空母「翔鶴」の搭乗員となった。昭和19(1944)年のマリアナ沖海戦で、敵戦闘機と激しい空中戦の結果、燃料タンクを撃ち抜かれた。もはや母艦にも帰れず、せめて敵機を道連れにしてやれと、体当たりを決意した。
その時、宮部の怒鳴り声が頭の中に響いた。「井崎! 貴様はまだわからないのか!」 同時に幼い弟の顔が浮かんだ。井崎はなんとか敵機の編隊から抜け出し、海面に不時着してから、9時間も泳いで、グアム島に泳ぎ着いた。何度も諦めかけたが、その都度、「兄ちゃん、兄ちゃん」と泣きながら呼ぶ弟の顔が浮かんできて奮い立った。
「しかし本当に私を助けてくれたのは、宮部小隊長だったと思っています」と、ベッドの上で井崎は語った。そして、こう続けた。
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実は、私は、ガンです。半年前に、医者からあと3ヶ月と言われました。それがどうしたわけか、まだ生きています。
なぜ、今日まで生きてきたのか、今、わかりました。この話をあなたたちに語るために生かされてきたのです。
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その時、井崎の孫が大きな声で泣き出した。その母親もハンカチで目を抑えていた。健太郎の姉も嗚咽を漏らしていた。
井崎は窓の外の空を見つめて言った。「小隊長、あなたのお孫さんが見えましたよ。二人とも素晴らしい人です。男の子はあなたに似て、立派な若者です。小隊長---、見えますか」
しばらく後、井崎源次郎の訃報を受けとった。焼香の時、孫の誠一を見かけたが、長い髪は短くなり、金髪は黒くなっていた。言葉は交わさなかったが、健太郎に深々と頭を下げた。
健太郎の中でも変化が起こっていた。しばらく諦めていた司法試験にもう一度挑戦してみようという気になっていた。かつて人々のために尽くしたいと弁護士を志した気持ちを取り戻したのだった。
家族や世のため人のために自分の命を使おうと思えばこそ、その大切さに気がつくのである。
引用おわり
井崎の孫は最初は金髪で、いかにも不良でヤンチャな青年であったが、井崎から特攻の話を聞いた後、その容姿も態度も変わっていた・・・
小説の中の1シーンではあるが、この感覚はよく分かる。
今まで戦争について考えもしなかった世代の人間。
漠然と聞こえてくる学校の授業や、テレビでの反戦を訴える声。
それをどう捉えるべきなのかも分からず、漠然と青春時代を過ごしてきた若者。
まさしく私もそのひとりだった。
私にはこの井崎のような祖父から話を聞く体験はなかったが、
一番身近な近親者がその戦争であった話を伝える。
これは一番強烈な記憶と、生命の継続、世代のつながりを生むことだ。
実はこれは戦後左翼の「専売特許」だった。
毎年、終戦記念日とされている8/15の前の1~2週間は、左翼御用達の戦争体験者が色々と話をしてくれる。
インチキと偽善にまみれた東京裁判史観を「語り部」として年寄りがいらんことをメディアに持ち上げられてやっている。
日本に必要なのはこの「井崎」のような特攻を知る語り部だ。
しかし真実に敵わないことを知る左翼たちは、これらの「語り部」を出すことを嫌う。
嫌うだけでなく、「戦前の軍国主義に洗脳された老人」というレッテル貼りまでご丁寧にやってくれる。
東京裁判史観でみごとに洗脳されているバカと反日系敵国のスパイしか、この「左翼」にはいない。
私の「永遠の0」でのお気に入りの場面は、
主人公、健太郎の姉と交際し始めた、エリート新聞記者(たぶん朝日新聞と思われる)が、特攻隊で生き残った老人に論破されるシーンがある。
百田尚樹も朝日新聞が大嫌いなのであろう。
このような作家がどんどん売れてくれることは
村上春樹のようなワケのわからぬ作家よりは日本にとって良いことだと思いますが、どうでしょう?
ちなみに村上春樹は私、読んだことないので、「読まず嫌い」なんですが、昨年の尖閣騒動でシナが日本企業に暴動で破壊をしまくったときに朝日新聞に載せた論説を読んで、それが正しかったことが分かった。こんなバカの書いた本を読むのは時間のムダだと。
「海賊と呼ばれた男」もいよいよ終盤近くになり、海賊が世界を席巻するシーンが近付いています。楽しみです。
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