歴史学者であり、高知大学名誉教授、新しい歴史教科書をつくる会副会長であります福地惇先生の貴重な小論文を掲載いたします。
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歴史の正当性と国民総意に基づかない日本国憲法
高知大学名誉教授 福地惇
(日本国憲法の)制定過程に限らず憲法の内容も大問題である。
日本国憲法の基本理念は、「象徴天皇」「国民主権の民主主義」「戦争放棄の平和主義」の三点にあり、いずれも人類史に普遍的な崇高な理念だと称揚されてきた。
だが、国民国家の基本法とは、祖国の歴史に刻まれた支配の正当性に基づくものでなければならない。アメリカ製の「日本国憲法」は、普遍主義に基づく無国籍憲法である。
第一章第一条の「天皇の地位・国民主権」では前段に「象徴天皇」を謳って明治憲法との継続性の保証を装いながら、後段では「(天皇)の地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」となっている。歴史・文化の伝統とは無縁な異邦人が土民の王を民心掌握の“出し”に使って、あたかも新国家を建設したかの様相を呈している。
本来ならば「天皇の地位は日本国の歴史・伝統・文化の正統性に基づく」とすべきだろう。明治憲法の第一章第一条「大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス」はまさにその章句だ。国家元首・国家大権の総攬者天皇が、現憲法第一条の「象徴天皇」に変貌し、単なるお飾りに化した。明治憲法の「国家主権」説が「国民主権」説に変更され、歴史・伝統と国家・国民統合の要である天皇に対する生殺与奪権を、先祖と縁を切らされる国民が持つという奇態な条項を冒頭に持つことになった。これは占領軍に強いられた「革命」である。
新憲法制定に際して東大法学部(憲法講座)教授の宮沢俊義(左写真)は、マッカーサーですら「明治憲法との法的継続性を尊重した」というのに、「八月の無条件降伏」で我が国には革命が起こり、「神勅主権主義」の封建的似非立憲法は壊滅し、世界史の法則に則り近代民主制へと進化した。形骸化した天皇は漸次衰滅するという御託宣を下した。宮沢は敗戦直後に、弾力性に富む明治憲法は改正しなくともポツダム宣言の要請を充たしえると言っていたはずである。それが21年初夏、「明治憲法改正審議」が帝国議会で開始される直前に、突如「八月革命説」なる見解の大転換を表明したのである。「革命」は20年8月ではなく、21年2、3月頃に起こされたのではないか。宮沢の変節は、マッカーサーに最大限に阿諛迎合した点で大問題だが、現憲法と明治憲法徒が断絶していると言っているのは正しい。誰が「國體壊滅革命」の主体なのか。日本国憲法が歴史の正統性を断絶し、国民の総意に基づかない憲法であることは、憲法学界の第一人者の変節で証明されている。
憲法を補完する『教育基本法』(昭和22年3月31日公布)は、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にして、しかも個性豊かな文化の創造を目指す教育を普及・徹底しなければならない」と、普遍性を尊重する国籍不明の世界市民の育成・教育を主旨としている。祖国の歴史や伝統文化を尊重し敬愛する精神の育成、教育には一言も触れず、立派な国民を育成する教育目標を見事に欠落させた、まさに「敗戦国体制」のための教育基本法であるというほかない。
子供たちのことを真剣に考えるなら授業をさぼるな!
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