【月刊正論】
本部競売を阻止せよ 総連トップがブチまけた『政界工作』の全容 産経新聞取材班
一時間半の「独演会」
ある「秘密会議」の記録が残っている。
今年(平成25年)3月5日午後1時から約3時間にわたり、東京都千代田区富士見の朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)中央本部で開かれた会議である。招集されたのは、東日本地域の地方本部幹部ら約450人。議題はまさに、その中央本部(中央会館)の土地・建物競売問題だった。
このとき「総連の本丸」である中央本部の土地・建物(土地・2387平方メートル、建物の延べ床面積1万1738平方メートル)は、・総連の借金のカタ・として競売にかけられ、他者の手に渡る瀬戸際にあった。昨年7月、経営破綻した在日朝鮮人系信組の不良債権を引き継いだ整理回収機構(RCC)によって、東京地裁に申し立てられた強制執行(競売)の入札が目前に迫っていたからである。
秘密会議は、危機感を募らせる地方の幹部らに「状況を説明する」という趣旨で行われた。5日の東日本地域に続き、7日には、近畿・東海地域で、12日には、九州・中四国地域を対象に行われている。
その東日本地域の会議で、マイクを握ったのは、80歳を超えてなお、総連のトップに君臨する許宗萬(ホ・ジョンマン)議長であった。目は悪くしたものの、実年齢よりも遙かに若々しくハリのある声、ゆっくりと語りかけるような口調…。かつて、演説の名人と謳われた許議長の話は、「独演会」さながらに約1時間半にも及んだという。
この中で、許議長は「われわれ(総連)の中でも知っているのは何人もいない話だ」と前置きして、驚くべきことを口にした。中央本部の競売を阻止するために、競売を申し立てられた昨年7月から、総連が民主党政権(当時)へ行ってきたという「政界工作」の全容を暴露したのである。
「拉致問題」の進展と・バーター取引・した競売阻止の密約、そのための閣僚人事、公にされていない密使の派遣…。まさに耳を疑うようなことばかりだ。
産経新聞はこの記録を入手し、3月27日付の紙面で報じた。許議長に名前を挙げられた民主党政権の幹部らは産経新聞の取材に対し、一様に許議長の発言内容を否定したり、「ノーコメント」を繰り返した。RCCや総連も同様である。
だが、許議長の発言内容が事実ならば由々しき事態ではないか。総連は、外交窓口の役割を担う一方で、総連内部の非公然組織は日本や諸外国からの拉致をはじめとした工作活動を行ってきたとされ、「対日工作拠点」との見方もある。
その本丸である中央本部の競売が・不透明な政治決着・によって中止されるようなことになっていたら、決して国民の理解を得られなかったに違いない。
乱脈融資の果てに
許議長が語った「政界工作」の内容については後に詳しく触れることにしたい。その前に、総連中央本部の土地・建物競売問題の経緯を改めて振り返ってみることにしよう。
東京都心の一等地にそびえ立つ、鉄筋コンクリート地上10階、地下2階建ての総連中央本部ビルは、昭和61年に完成した。北朝鮮の事実上の「大使館」であり、総連のさまざまな部局が入居する「首脳部」。建設時に在日社会から資金を集め、陣頭指揮を執ったのは、許氏その人だったという。
だが、平成11年5月に朝銀東京信用組合が経営破綻したのをはじめ、総連の影響下にある各地の朝銀信組が、バブル崩壊後に相次いで経営破綻。13年11月には朝銀東京信組の理事長らが約8億円を横領したとして、警視庁捜査二課が業務上横領容疑で初めて中央本部に家宅捜索に入るという事態を招いた。こうした背景には、総連主導による不明瞭な資金調達の強要や、北朝鮮への不正送金などがあったと指摘されている。
経営破綻した信組の不良債権を引き継いだRCCは、17年11月、総連が、朝銀東京信組などに乱脈融資を行わせたとして約627億円の返済を求めて東京地裁に提訴。
総連側も法廷闘争で対抗したが、627億円全額について、総連に支払いを命じる判決(19年6月、東京地裁)が確定。昨年六月には、中央本部の実質的な所有者が総連であることの確認を求めた別の訴訟でも、RCC側の勝訴が確定し、競売の条件が揃った。
RCCの競売申し立てを受けた東京地裁は、昨年7月12日付で、競売手続きを開始する決定を行い、同年8月11日には、東京地裁の執行官が物件の構造や占有状況を把握するため、中央本部への立ち入り調査を実施。そして、今年2月25日付で、東京地裁は、総連中央本部の競売を公告した。鑑定評価による売却基準価額は約26億6800万円、入札の下限額は約21億3460万円。入札期間は、3月12日~19日、開札は同26日、同29日に売却先を決定する、というスケジュールである。
入札には四者が参加し、鹿児島市の宗教法人「最福寺」が、基準価額を大きく上回る45億1900万円で落札することになるのだが、「秘密会議」が開催されたのは、競売の入札直前であった。“総連のシンボル”たる中央本部が、他者の手に渡る瀬戸際に立たされていた時期だったのである。
許議長はなぜ、この時期になって、「政界工作」を暴露したのか。
そこには、中央本部競売問題で許議長が追い込まれた厳しい立場と、それに対抗し保身を図ろうとする「したたかな戦略」が見え隠れする。秘密会議での発言を追いながら、許議長の狙いに迫ってみたい。続きは月刊正論6月号でお読みください
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うーん、ここまで読んで、うっちゃりを食らいましたね。
でも「月刊正論」6月号、読みたくなりました。
まだ本屋にあるかな?