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Channel: 電脳工廠・兵器(武器,弾薬)庫
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身近な放射線利用  1

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士幌アイソトープ照射センターを見学して

北海道室蘭市立東中学校 教諭 上坂剛士

 北海十勝の北部、士幌町の農業協同組合の施設「士幌アイソトープ照射センター」を見学させて頂いた。士幌町にある理由は、次のようなものだった。
 
現在日本では、放射線の照射が認められている食品はジャガイモだけであること。
士幌町をはじめとする十勝は全国有数のジャガイモの産地であること。
ジャガイモに放射線を照射するための施設は、日本では士幌町にしかないこと。
また、なぜ、ジャガイモに放射線を照射するかも疑問であったが、見学して次のことがわかった。
全国で生産されるジャガイモは、秋頃は多いが、3月から4月にかけて品薄で価格が上がる。
そのころに出荷すると良いのだが、そのころまで通常の方法で保管していると発芽してしまい商品価値がなくなる。
発芽を止める方法として、薬品を使う方法が一般的だが、ジャガイモの中に薬品が残留するおそれがある。
そこで、士幌町では、コバルト60から出るγ線を照射することによる芽止めを、昭和48年から行い、品薄の時期に出荷できるようにしている。
照射は、10月から3月にかけて行われ、現在は準備中のため、照射施設の中まで入ることができた。

 
ジャガイモをのせた大きなカゴが移動するレールの上を歩いていくと、1辺が20m程の正方形の部屋に出た。中央には深さ6.4mの水槽があり、底には青白い光を放ち10月からの稼働を待つコバルトが見えた。
 
実際に照射するときには、ジャガイモのカゴを室内に円形に並べ、コバルトを水底から引き上げて照射する。放射線の漏れを防ぐため、施設は厚さ2mの壁で覆われている。
 
放射線について素人の私は放射線を照射したジャガイモは食べても安全なのか。
 
放射線漏れの心配はないのか、地域の人はこの施設をどう考えているのか、をまず考えた。しかし、見学と説明を聞いて次のようなことが分かった。
放射線はジャガイモのを透過してしまい、残留しないため、食べても安全である。
 
施設は厚い壁と観測装置で常時観測されており、照射中に万が一漏れが観測された場合には、コバルトは水槽の中に沈むようになっている。
施設ができてから20年以上になるが、地域の住民はこの施設について、特に不信感などは持っていないようである。私たち北海道民は出荷に時間を要することなく新鮮なうちに食べることが出きるため、スーパーなどへ行っても
「芽止めジャガ」の表示を見ることがない。出荷に時間を要する関東や関西方面へのジャガイモに芽止めを行う宗である。食卓に「芽止めじゃが」が出回らないことも、地域の人に抵抗感がない理由だろうか。この点では関東や関西の方々の考えをお聞きしてみたいところである。

 
原子力発電も外観しか見たことのない私にとって、この施設の内部を見学できたことは驚きだった。コバルト60の青い光がとても印象的だった。
 
今回初めて放射線を使っている施設を見学させて頂き、厳しい管理のもと、農業協同組合の施設の一つとして、実用されていることが分かった。
 
今後は、機会があれば発電に利用されている場合や、それ以外に活用されているものがあれば、また見学させて頂きたい。そして、私たちの生活とのかかわりを生徒とともに考えていく材料になればと考えている。
 

アイソトープ照射センター

集荷されたジャガイモが運ばれてくる

倉庫のジャガイモ


水槽の底で青白い光を放つコバルト60

同左



 
           

ジャガイモの運ばれてくるレール        照射センターの水槽
 
 
 
 
 

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