「日本待望論 愛するがゆえに憂えるフランス人からの手紙 」オリヴィエ・ジェルマントマ著
日本人ほど、日本の文化と歴史を知らない民族はいないと言われます。
歴史教育を教えない・・・戦後70年弱の戦後教育の弊害といえましょいう。マスコミの論調もこの見識に基づいて報道される。「ある民族を滅ぼすには、その民族の記憶を消すことだ」という箴言そのまま、歴史を喪失してしまったのではないか。
歴史を知らない民族はいないと、世界の知識人からおどろかれる所以のものは、自らのルーツたるべき、あるいは、日本人のアイデンティティたるべき、神道と天皇陛下の存在を前近代的なものとして否定しつづけることにあるのではないか。アイデンティティを鼓舞しない偽りの歴史を正当なものとして受け入れる限り、歴史音痴の日本人は、周辺諸国の利害に翻弄され、亡国の民となってしまうでしょう。
作家で、フランス国営文化放送プロデューサーのオリヴイエ・ジェルマントマ氏の平成11年11月11日皇居前広場で行われた氏の天皇陛下御即位十年国民祭典記念講演を以下に引用します。
こころある日本人の方々、ご考慮願いたい次第です。
日本人ほど、日本の文化と歴史を知らない民族はいないと言われます。
歴史教育を教えない・・・戦後70年弱の戦後教育の弊害といえましょいう。マスコミの論調もこの見識に基づいて報道される。「ある民族を滅ぼすには、その民族の記憶を消すことだ」という箴言そのまま、歴史を喪失してしまったのではないか。
歴史を知らない民族はいないと、世界の知識人からおどろかれる所以のものは、自らのルーツたるべき、あるいは、日本人のアイデンティティたるべき、神道と天皇陛下の存在を前近代的なものとして否定しつづけることにあるのではないか。アイデンティティを鼓舞しない偽りの歴史を正当なものとして受け入れる限り、歴史音痴の日本人は、周辺諸国の利害に翻弄され、亡国の民となってしまうでしょう。
作家で、フランス国営文化放送プロデューサーのオリヴイエ・ジェルマントマ氏の平成11年11月11日皇居前広場で行われた氏の天皇陛下御即位十年国民祭典記念講演を以下に引用します。
世界の画一化に如何に抗すか
こんにち、地球上の至るところで人間社会は一つの問題に遭遇し、この間題の複雑性は二十一世紀に向かって増大の一途をたどりつつあります。それは何かと申せば、恐るべき世界の画一化に対して、国家のアイデンティティを如何にして守るかということであります。
これについて真実は既に明白であるにもかかわらず、まだ十分に理解されるには至っておりません。この真実とは、世界の画一化が進めば進むほど、それぞれ の民族は己のルーツと国の独立に忠実であらねばならず、さもないかぎり諸民族はすべて風のなかの藁くずのよう忙恢きさらわれるほかはないということ、この ことであります。
これについて日本の生んだ国際的映画女優であり、またフランス人が大層敬愛しております岸恵子さんが、最近つぎのようなことを日仏間で述べておられます。「日本は、いまこそ、その本姿を取り戻す造に邁進すべきです」と。
日本の天皇陛下が比類なき役割を演じられたのは、まさにそのような意味においてでありました。天皇の御存在あればこそ、日本民族は、一直線に、連綿とし て絶えることなく、その最も遠い歴史の淵源と今なお結び合わされているのであります。世界広しといえども、このような国は、たった一つ、日本しかないので あります。
日本国民の統一と安寧を守るために、日夜、天皇が御心を砕き、民族の偉大性をも不幸をも一身に持しておられることを、私共はよく存じあげております。貴 国の長い歴史にわたって天皇は、武士と歌人と神宮と、貴賎を問わず民草の頂点に立ってこられました。最も貧しい百姓といえども、遠つ世においては、この大 いなる血筋の末裔であることを誇りとする、そのような国柄だったのであります。
そして何よりも、天皇をとおして日本の皆さんは、『古事記』『日本書紀』の物語る神話に結ばれ、また神道に結ばれてきました。
神道なくして日本の存在はありません。
天皇は日本国の無窮の象徴であらせられ、その御存在を拠り所として皆さんは、来るべき二十一世紀に臨んで必要なる霊力を身におびられるであろうと、私は確信いたします。
伝統に忠実であるとともに、他の異文化に対しても開かれてあることが、この場合、必須の条件となります。けだし、自らのルーツに忠実なる者のみが異文化に心を開くことを恐れないからであります。
人類文明の問題とは、物質的サブカルチャーが諸民族のルーツの根幹そのものを揺るがしているという事実であって、これに対して、自然と一体化した神聖と 調和の文化の保持者たる日本が、どう貢献しうるか、これを皆さんが望んでいらっしやるのか否かが、問われているのだと申したいのであります。
日本よ、独立国家たれ
しかし、そのためには、一つの条件がクリアされねばならないこと、
申すまでもありません。日本は、アジアおよび世界において、日本本来の均衡の役割を果たされんことを望まれており、それは貴国が何を措いても独立国家でなければ叶えられないという、この条件なのであります。
いかにも、戦後、我々は、外国の軍隊によって祖国が占領されるという不運を共通に味わってきました。たしかにそのような歴史的条件がさまざまにありまし た。だが、状況は一回転した(revolue)のです。いまや、日本にとって、真の独立達成、主権回復の時であります。この裏の独立、其の主権を、次世代 が「日本人とは何か」ということを忘れはててしまうまえに、確立しなければなりません。しかも、どこかアジア大陸の大勢力の国家が覇権を確立するまえに、 それを達成しなければならないのであります。
かくいうフランスは、ではお前はどうなのかと言われれば、私共も、何度にもわたって主権喪失を経験してまいりました。お国の明治維新以後の時代にかぎつ ても、一八七〇年と、一九一四年と、一九四〇年とで、三回も外敵に侵略されてきているのです。第二次世界大戦においては、恐るべき野蛮なナチの軍隊によっ て四年間も占領されました。
かくして、大戦下において、シャルル・ド・ゴールの指揮下にレジスタンス運動が生まれたのでありました。そしてド・ゴール将軍は一九五八年に、国民的要 請によって政権の座につくや、二つの大事業を達成したのでありました。すなわち、新憲法制定による第五共和国の創建と、核抑止力による完全独立の国防の二 つであります。
ド・ゴールのおかげで生まれた現代フランスの制度は、大黒柱として七年間任期の大統領を元首とし、大統領は国軍の長として独立を保証します。では、かか る制度をもたらしたド・ゴールその人の心中は那辺にあったかと問えば、いかにして往年のフランス王国の長い伝統を、フランス革命によって生まれた共和国の 理想に結ぶかということにありました。
フランス人とて、過去を忘れたわけではないのです。一七八九年の革命が、その二年後、王の首を斬って達成されたことで、いつまでも胸の痛みは消えること はありません。この断絶は、ド・ゴール将軍の天才を保って初めて越えることができたのであります。ここから、フランスは、歴史のなかで再統合されることを 得たのでした。
国と民族の、この再統合以上に、民族の存続のために必要なるものがあるでしょうか。
「国際的役割を演ずる上において肝要なことは、自らの手で、自らの所を得て存することである。まずもって国家的現実ならざる如何なる国際的現実もないのである」。いみじくもこれは、一九五九年十二月十三日に発せられたド・ゴール大統領の宣言であります。
神道は人類の文化財
この一介のフランス人をして、あえて日本に対しては、かく言うことをお許しください。
貴国の天皇に対して、もっと大きな役割をお認めしてしかるべき時代が、ついに到来したのである、と。
なぜならば、大和朝廷以来の歴史に即して、天皇御一人のみが、全き精神の独立をもって遠くまで見そなわすことがおできになるからであります。天皇御一人 のみが、個々人の利害をこえて、日本民族に対してその未来をお示しになることができるからであります。必要とあらば、いかなる犠牲を払って唯物主義的消費 社会の悪弊から逃れるべきか、その道をお示しになれるからであります。
天皇の権威は、ひとえに、歴史が天皇をとおして語ることに由来しております。
しかし、また、神道が、天皇をとおして語ることにも由来しているのであります。神道こそ、日本の最も貴重なる文化財にほかなりません。神道こそ、あなた がたが世界でユヒークなる民族たることの証であり、万邦の繁栄のためにユニークでありつづけなければならないことの証であります。
今度で七度目の訪日をつうじて、神道との接触は、つねに自分にとって最も豊餞なる経験をもたらしてくれました。伊勢、大神神社、出雲、熊野、富士山、筑 波山、…このほか多くのお社をめぐって日本中を歩きました。最後には自分の子供たちをも呼び寄せ、これらの聖地の幾つかに連れ歩いては、こう言って聞かせ ました。「ここでたっぷりと霊感を受けなさい。日本の魂はここにあるのだから!」と。
もちろん、明治神宮に参拝したことをも申し添えなければなりません。明治神宮なくして東京が「水遠の日本」に結びあわされることはありえないことでしょう。
日本神話をもって、皆さんは、来るべき二十一世紀文学の糧となる、
波めども尽きせぬ宝を手にしておられるのであります。そうであればこそ、一個の異邦人にとりましては、この宝が、どうもお見受けしたところ、学校なり映画 なりによって次世代にほとんど伝えられていない、これも外からの圧力によってそれを強制されている様子を見て、驚きを隠しえないのであります。
日本神話は、もはや人類の文化財です。今後、私は、日本神話と神道の豊饒さを我がフランス人の同胞に伝えることをもって、もちろん異邦人としてですから、虔しやかにしかできませんけれども、これをもって我が天職といたしたいと、こう考えてさえおります。
神道がその開かれた精神を汲みとる源泉は、その自然の表しかたにあり、そして自然は普遍的存在なのであります。自然の神聖化(sacralis ation9)への内的欲求がますます高まりつつあるこんにち、神道の霊的影響を日本の国外に及ぼすべき機会がついに到来したといえるでありましょう。
世界は真の日本を
待望している
「一国の名誉は、まず第一に、その国が何を世界にもたらしうるかにかかっている」と、アンドレ・マルローは、彼がド・ゴール大統領の文化大臣だったとき に宣言しております。日本は、その文化をとおして、すでに多くを世界にあたえてきました。日本は、さらに多くをあたえることができるのです。もし、ふたた び、自らの伝統的価値に信頼を置きさえするならば。
私は、貴国のことばかりを考えてそう申しあげているのではありません。日本がそうなってくだされば、フランスのためにも、ヨーロッパのためにもありがた いと思って申しあげているのです。独立とアイデンティティは、万邦の間にあって、互いに友愛的であり、支えあうべきものであります。
日本が自己信頼を回復するためには、天皇の御役割こそ絶対必要であります。たとえ、アマテラスの鏡のごとく、その御存在が隠れてありましょうとも。そも そも一個の西洋人にとりましては、日本文化の最大の教訓の一つは、幽なるもの(陰影のうちにあるもの)は白日のもとの顕なるものより、しばしばはるかに 勝って強力なのでありますから。
日本の皆さん、私は地球の反対側から、一つのことを申しあげるためにやってまいりました。それは、このよケであります。
《世界は、其の独立国家日本を待望している。自己の伝統に忠実で、しかも万人に開かれた日本を。願わくば、この日本が、全人類の典型として仰ぎ見られ、あの有名なる明治天皇の御製のように世界に伝わっていきますように!》
(日本語で)
四方の海みな同胞と思ふ世になど
波風のたち騒ぐらむ
(日本語で)
ニッポン・バンザイ!
こころある日本人の方々、ご考慮願いたい次第です。