「日本の神話」 出雲井 晶(いずもい あき)作
冒頭の画像は一昨年五月に83歳で亡くなられた、「日本の神話」伝承館』館長、『「日本神話の心」伝承の会』会長、日本会議代表委員であった、出雲井 晶氏の作品の一部です。
出雲井 晶氏は、「日本の神話」伝承の会の設立にあたり、に次のように述べられています。
出雲井 晶(いずもい あき)氏
(設立趣意書 )
最近の日本を見回しますと、さまざまな面で危機的状況を感じないではおられません。こうした病める日本を立て直す鍵こそ『日本神話の心』ではないでしょうか。日本人みんなの遠いご先祖が、大宇宙の法則に則って発見し、伝承してくれた『日本神話の心』。これを皆が正しく知り、自分のいのちと日本の国の素晴らしさに覚醒する以外に、日本が立ち直る道はないと存じます。
「日本神話の正しい心」がよみがえるとき、自分への自信と祖国への誇りが湧いてきて、わが国は本来の明るさを取り戻すでしょう。子供たちは、さわやかな希望に胸をふくらませて向上していくことでしょう。
『日本の神話』は、子孫たちへの"幸せへの道しるべ"として、古代ご先祖が情愛をこめて伝承してくれた宝物です。次は私たちが子供たちに伝えるべき使命があると考えます。
( 絵画寄付などについての趣意書 )
現今の世相は、物質は豊かに科学文明も進むだけ進みました。が、それによって人々 は目に見える狭い現象界のことしか思い及ばず、目に見えない悠久不変なるもの、 人間が生きていく上で一番大切なものが忘れられているように思われてなりません。 これは戦後の日本弱体化の為の占領政策と、それに便乗した反日的日本人によって、わが日本 国の原点、理念が消されたまま、今日に及んでいるからに外ならないと思います。 わが日本人みんなの遠い古代ご先祖が大宇宙の法則に合致しとけこみ発見し、そして伝承 してくれた「古事記・神代=日本神話」が消されてしまったからだということです。 目に見えないもの目に見えるもの、全ては神、神のあらわれとの壮大な思想や、天照大御神 から続く皇統の尊厳、その皇室を慕い形成された麗しい国体が消されてしまったからと、私は 考えます。
「日本神話」には、大宇宙無窮の理法が語られ、わが古代ご先祖はこの深遠な理を国家の 原点にすえて日本国を創生してくださいました。私達子孫は「日本神話」によってはじめて自分達の 偉大な古代ご先祖の叡智と愛を正しく知ることが出来ます。 その教えに則って生きるとき、人々は幸せに生き国家も繁栄します。ひとりわが国だけでなく 「日本神話」の真理は、世界の宝、聖典であると私は信じます。世界の心ある多くの学者たちも これを認めております。
「日本神話」にこめられた大和の魂、日本の心によって、次代、また次の次の世代と、永遠に 日本の国の子供たちが、明るく希望にもえて生き、日本の国が明るく栄えますように、世界の すべてのの人々が和して仲よく人類が救われることを願い、祈りをこめて私は「日本神話」 の書物をかき、又、描き続けました。その拙作全てを寄贈させていただきます。日本神話は、私たちの先祖が語り継いできた神々の物語であり、そこには、先祖の心が反映しているとともに、わが国の国柄の由来を読み取ることが出来ます。出雲井氏の作品には、心を洗われるような、明るく夢のある絵が、たくさん盛り込まれています。出雲井氏は神話について、次のように書かれています。「私たちの遠い遠い先祖の古代日本民族は、まことにそぼくで物質文明に晦(くら)まされていなかったのです。それで澄んだゆたかな感性を持っていたのでしょう。その澄んだゆたかな感性で、悠久の昔から未来永劫に続いていく天地をつらぬく理法、大宇宙の法則を直感で感じとり、正しい大宇宙観として深い人生観として持っていたことが読み取れます」『古事記』の日本神話は、
“天地(あめつち)の初(はじ)めの時、高天原(たかあまはら)に成(な)りませる神の名(みな)は、天之御中主神(あめのみなかぬしのかみ)。…”と朗々と語られています。一般に今日の日本の神話では、太陽神・天照大神(あまてらすおおみかみ)が中心であると考えられています。これに対し、出雲井氏は、「天御中主命」(あめのみなかぬしのみこと)を、神話世界の中心に描かれています。実は、皇室の祖先神とされる天照大神は、天御中主命を筆頭とする天神七代の後に現れたイザナギ・イザナミの二神から生まれています。つまり、神々の系譜ではかなり後の代に現れた神なのです。天御中主命は、古事記の冒頭に記されています。名前の通り、宇宙の中心に存在する神です。鎌倉時代の度会家(わたらいけ)が創始した伊勢神道、江戸時代の平田篤胤(あつたね)による復古神道など、様々な神道思想の中で、天御中主命は宇宙の最高神として崇拝されてきました。出雲井氏は、この天御中主命とは「大宇宙の理法」であり、すべてのものを生かしている「力」であると捉えられています。そして、天御中主命と天津神の神々の関係を、次のように表現されています。「日本の神話では、高天原の天之御中主神の神話でまず、古くて新しい、どんな時でも変わることのない大宇宙の理法、天地をつらぬく法則がさし示されています。ついで伊邪那岐(いざなぎ)・伊邪那美(いざなみ)ニ神による国生み神生みがなされます。
その最後に天之御中主神のもっとも尊い化神として人格神として天照大神が誕生されます。そして、天地をつらぬく理法、法則にのっとって日本の国が建国されていく様子が示されています」出雲井氏は、天御中主命を「天之御中主神」と書いていますので、引用文ではその表記します。出雲井氏によれば、天照大神を含む他の八百万(やおよろず)の神々は、すべて、天御中主命という本源の神の現れです。そして、天御中主命の「もっとも尊い化神」である天照大神が、自らの子孫であるニニギノミコトを日本の国につかわします。これが天孫降臨の物語です。天の逆鉾(高千穂)出雲井氏によると、「天孫降臨の神話はわが偉大な先祖が、すべてが調和した目に見えない神の正しい道理の世界を、目に見えるこの地上にもあらわそうと考えたのです。その壮大な夢、理想の実現が『天皇の国・日本』の始まりでありました」。天照大神は、ニニギノミコトに対し、三種の神器を授けられました。すなわち鏡と剣と勾玉です。出雲井氏は、次のように述べられています。「日本建国の心・魂は、ニニギノミコトが天下(あまくだ)られますときに天照大神から賜った三種の神器にこめられています。無私なる澄みきった叡智と限りない恕(ゆる)しをふくんだ慈愛と正しい勇気で大和(だいわ)し、すべてが調和する明き清き直きまことの心の国の建国をめざしたのです」三種の神器のうち、鏡は「無私なる澄みきった叡智」を象徴し、勾玉は「限りない恕(ゆる)しをふくんだ慈愛」を、剣は「正しい勇気」を象徴すると出雲井氏は考えられました。続いて出雲井氏は、次のように書いています。「天照大神は天孫ニニギノミコトに『豊葦原(とよあしはら)の瑞穂国(みずほのくに)は、わが子孫の君たるべき国なり、みましゆきて治(し)ろしめせ、天つ日嗣(あまつひつぎ)の隆(さか)えまさんこと天壌(てんじょう)と共に窮まりなからんものぞ』と、おおせられました。この三種の神器のお心を体され、みんなが幸せに仲よくくらせる理想郷の実現をねがわれたのが、神武天皇さまでありました」神武天皇とは、日本を建国したと信じられている初代の天皇です。神武天皇の願いとは、「橿原(かしはら)建都の詔」に記されているもので、その理念の根幹が、「八紘為宇(はっこういう)」(一宇とも書く)です。「八紘(はっこう)を掩(おお)ひて宇(いえ)と為(せ)む」つまり天下に住むすべてのものが、一つ屋根の下に大家族のように仲良くくらせるようにしようという理念です。出雲井氏は、日本神話には「永久不変の真理が記されている」といいます。その「永久不変の真理」とは、「すべてのいのちは天之御中主神のおいのちの分けいのちであり、それぞれがところを得て調和していく、という生命観・世界観です。…それが神武天皇の『橿原建都の詔』に国の理想として示されたのです。『八紘為宇』とは大和の精神、『和』のこころです。つまり、大宇宙の理法、真理そのものが、國體(こくたい)=国の姿として現れ出たというところにあるのです」と出雲井氏は述べられています。出雲井氏は、このように、天御中主命に始まり、天照大神から神武天皇に続く、神々の物語を描かれています。日本の国や日本人の精神について知ろうと思うならば、日本神話の世界に親しむ必要があります。出雲井氏の書く神話の世界は、現代の日本人が失っている豊かな感性を取り戻させてくれるでしょう。日本神話をよく熟知されている世代よりも、戦後教育の影響で日本神話を知らない世代が人口の大勢を占める今日の日本。民族のアイデンティティをなくすとその民族は滅びるしかありません。
世界的な歴史学者として知られるアーノルド・トインビーは、「12、3歳までに自分たちの国の神話を教えない民族は100年以内に必ず滅ぶ」と指摘しました。日本と日本人の素晴らしさを自覚し誇りをもった国民が少しづつですが、目覚めています。民族のアイデンティティである、神話を学び、お国柄を知り、祖国に誇りを持つことこそ、神話を今日まで語り継いできた先人・先祖のこころを知り、継承することではないでしょうか?続く・・・