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シドッティとの問答により得た新井白石のキリスト教観

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2012-10-24

シドッティとの問答により得た新井白石のキリスト教観Add Star

 
キリスト教は一宗教と結論づけた新井白石
 
f:id:jjtaro_maru:20121024000829j:image

 
 江戸時代最後の伴天連(バテレン)、イタリア人司祭ジョヴァンニ・バッティスタ・シドッティは日本でキリスト教布教の許可を得るため、宝永5年(1708年)8月に単身で屋久島へ上陸しました。シドッティは捉えられて長崎で尋問を受けます。そして処刑もしくは拷問を受けて棄教させられる運命にありましたが、これに大いに興味を持ち、江戸に呼び寄せたのが将軍家最高顧問新井白石です。
 
 白石は切支丹屋敷の土蔵から三冊の書物を借り出して予習しました。岡本三右衛門(ジュセッペ・キャラ神父 棄教)の「天主教大意」という書物でした。そして、宝永6年11月~12月の間、4回にわたって尋問を行いました。
 
 白石は最初のうちは、意図的にキリスト教の話をせず、地理や外国の事情について質問します。シドッティはスコラ哲学、地理学、天文学、科学、人文学など多方面の学問をおさめており、白石からの質問に科学的に明快な解を出します。白石は非常に感心しました。
 
「凡そ其人、博聞強記にして、彼方多学の人と聞えて、天文地理の事に至りては、企及ぶべしとも覚えず」
 
 最後の尋問の日、遂に白石はシドッティに来日の目的を聞きました。シドッティはわが意を得たりとゼウスの地創造から、アダムとイブの話、ノアの方舟、モーゼの十戒、聖女マリアの受胎、イエス・キリストの蘇生と昇天・・・これまですべて科学的知識を持って答えていたシドッティが非科学的、そして予習しておいたキリスト教の教えと寸分たがわないシドッティの説明に白石は驚きました。
 
「其教法を説くに至りては、一言の道にちかき所もあらず、智愚たちまちに地を易へて、二人の言を聞くに似たり」
 
 日本人にとって「神」は人で、徳のある人を神といいます。マンガの神様手塚治虫、野球の神様、川上哲治、お客様は神様です天皇陛下現人神・・・キリスト教では全能の神ゼウスが万物を造ったというのです。
 
「番後デウスといふは、此に能造之王といふがごとく、たゞ其天地万物を剏(はじめ)造れるものをさしいふ也。天地万物自ら成る事なし。必ずこれを造れるものありといふ説のごとき、もし其説のごとくならむには、デウス、また何ものゝ造るによりて、天地いまだあらざざる時には生まれならむ。デウス、もしよく自ら生まれたらむには、などか天地もまた自らならざらむ。又天地いまだ成らざる時、まづ善人のために天堂を造るの説、天地もいまだ生ぜずして、其人すでに善悪の相わかれしも心得ず」
 
 ゼウスが万物の創造主で万物は自ら成る事はないというのなら、ゼウスは天地が生まれる前にいったい誰が造ったのか。ゼウスが自ら成ったというのなら、天地も自ら成れるではないか。また、天地が生まれる前に善人のための天国を造ったという説など、天地ができていないから人間は善悪も知らないときの話しではないか。白石は「理解不能」と述べています。
 
「凡其天地人物の始より、天堂地獄の説に至るまで、皆これ仏氏の説によりて、其説をつくれる所なれば、これ又ことごとく論弁するに及ぶべからず」
 
 白石仏教の教えを使ってもキリスト教の説は作れるわけで、とるに足らないという見解を示しています。
 
「其天戒を破りしもの、罪大にして自ら贖(あながう)ふべからず、デウスがこれをあはれむがために、自ら誓ひて、三千年の後に、エイズス(イエズス)と生まれ、それに代わりて、其罪を贖へりといふ説のごとき、いかむぞ、嬰児の語に似たる」
 
 アダムとイブが天戒を破った罪を三千年もあとにゼウスイエス・キリストという人間になってこの世に生まれて、罪をあながうことになったという話しなど赤ん坊の片
言のようなものだ、と切り捨てています。
 
 このほか白石はノアの方舟の話で洪水によって人類のほとんどを溺死させたゼウスを、全能の神であり「大公の父無上の君」が皆を善人に改良せず、キリスト教の教えに従わせることをせずに絶滅させるとは何事だ、と述べています。
 
 白石は結局のところ「其教主の像につかへ、灌頂(かんじょう)・受戒・戒律・符呪・念珠等の事共有之候次第、一々仏家と相同じく候」キリスト教仏教と同じ一宗教であろう、とします。そして「謀略の一事ゆめゆめあるまじき事」キリスト教には謀略の意図はなく、シドッティの来日にも侵略の意図はなく、ローマの使者として結論付け、その命を助けました。


 
参考文献
 
 新人物往来社「最後の伴天連シドッティ」古井智子(著)
 
 平凡社「西洋紀聞」新井白石(著) / 宮崎道生(校注)
 
添付画像
 
 カルロ・ドルチ作 聖母像(親指のマリア) シドッティが所有していたもの
 
 「画像提供:東京国立博物館」http://www.tnm.jp/
 
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